LiLiCo 映画の感動を人生に取り入れて!のヘッダー

情報番組「王様のブランチ」に映画コメンテーターとしてレギュラー出演することが決まってから早23年。
きっかけは雑誌のインタビューで好きな映画3本を挙げたことだった。その答えが同番組のプロデューサーの目に留まり、レギュラーに。
まさに映画が人生の転機になった。
そんなLiLiCoさんが人生の力になる映画をセレクト。その魅力を語ってもらった。


さまざまな人間ドラマが描かれる映画は、まさに人生の学校。
そんな映画の魅力をお届けする本特集の巻頭インタビューは映画コメンテーター、タレントとして活躍するLiLiCoさん。
さらに映画評論家、そして激辛批評にも定評がある井筒和幸監督に人生を学べる作品をご紹介いただきます。

[人生の転機となった3本の映画]

TV版アニメ『サウスパーク』の吹き替えを担当した時、取材でいろんなタイプの好きな映画を挙げてみました。映画をすすめるコメンテーターとしての素質があったというよりは、プロとしてバラエティに富んだものを選ぶべきだと思って。

挙げた3本は『サウスパーク/無修正映画版』と、サンドラ・ブロック主演のコメディ『デンジャラス・ビューティー』、そして年配の方でも楽しめる感動のラブストーリー『太陽の誘い』。これなら『サウスパーク』が苦手でも、コメディに興味がなくても、いろんな人におすすめできるんじゃないかと。

私はいろんな映画を紹介していますが、洋画を頑張ってプッシュしないといけないかなと思っています。字幕を読むのが面倒くさいとかで観ないのはもったいない。
1週間に20本以上公開されますから、紹介しない映画のほうが多いけど、できるだけたくさん紹介したいと思っています。
今回は、プロとして人生の局面に合わせた映画を自信をもってご紹介します。

人生の転機となった「好きな映画」として挙げた3本

『サウスパーク/無修正映画版』 (1999) 監督・声の出演/トレイ・パーカー、マット・ストーン 写真:Everett Collection/アフロ
『サウスパーク/無修正映画版』 (1999) 監督・声の出演/トレイ・パーカー、マット・ストーン 写真:Everett Collection/アフロ
『太陽の誘い』(1998) 監督/コリン・ナトリー 出演/ロルフ・ラッスゴード、ユーハン・ヴィーデルベリ 写真:Album/アフロ
『太陽の誘い』(1998) 監督/コリン・ナトリー 出演/ロルフ・ラッスゴード、ユーハン・ヴィーデルベリ 写真:Album/アフロ
『デンジャラス・ビューティー』(2000)監督/ドナルド・ペトリ 出演/サンドラ・ブロック、マイケル・ケイン 写真:Jerry Watson/Camera Press/AFLO
『デンジャラス・ビューティー』(2000)監督/ドナルド・ペトリ 出演/サンドラ・ブロック、マイケル・ケイン 写真:Jerry Watson/Camera Press/AFLO

[コンプレックスに負けそうな時は?]

多分コンプレックスに負けそうな人は映画なんて観ない(笑)。
それはさておき、自分の中でのおすすめは『ワンダー 君は太陽』。

顔に障害のある男の子が10歳で初めて学校に行きます。イジメや偏見にさらされ、最初はかわいそうだなと観ていましたが、両親や友達と、それぞれの目線から描くもっていき方がすごくいいんです。
特異な個性を持っていたとしても、皆と普通に接していれば、必ず支えてくれたり友達になってくれたりする人はいる。
これはずっと生き続ける傑作だと思います。中でも母親のジュリア・ロバーツの演技が素晴らしかったです。

コンプレックスに負けそうな時に観たい映画

『ワンダー 君は太陽』(2017)監督/スティーヴン・チョボスキー 出演/ジェイコブ・トレンブレイ、オーウェン・ウィルソン、ジュリア・ロバーツ 写真:Everett Collection/アフロ

[大切な人と別れた時は?]

公開中の作品をどうしても紹介したく、4月19日公開の『異人たち』を。

大林宣彦監督によって映画化された山田太一さんの小説『異人たちの夏』を再映画化した作品ですが、大林作品とはまったく別物。英国バージョンで描かれている別れはみんなが通る道です。
本作では親との別れが描かれますが、誰にだって身近で亡くなられた方はいると思います。祖父母だったり、友達だったり、仕事仲間だったり。亡くなった人は見守っていてくれるってことをそのまま描いているのが素晴らしい。なぜ主人公がこんなに切ない目をしているのか。最後のシーンは一生忘れません。すぐまた観たくなる。

あと、幼い時に両親を亡くした主人公が、幼少期を過ごした家を訪れる気持ちはよくわかります。私もスウェーデンに帰ると、生まれ育った町に行ったり、実家を覗(のぞ)いていたりしていました。ある年齢になると、ノスタルジックになる。でも一昨年前から、そういったことは止めました。どこかで、これはいけないと思って。

それはこの映画と同じで、親の気持ち——ちゃんと一人の人間として頑張らなきゃダメだってことを感じたから。ポスターを見ると同性愛をテーマにした映画にも思えますが、そうじゃない。すべてに意味があり、何度も観たくなる作品です。

30〜40代になると、孤独を感じている人も多いと思います。だからこそ共感できる部分も多いんじゃないかな。この作品を18歳くらいで観たらきっと理解できなかった。前半は、どういうこと?って意味がわからない。だけど最後に、すべてが合わさる。その時、涙があふれます。

この作品を観なかったら、当たりの宝くじをゴミ箱に捨てたのと同じくらいもったいない。80歳で観たとしても、残りの人生がすごくいい時間になると思います。

大切な人と別れた時に観たい映画

『異人たち』(2023)監督/アンドリュー・ヘイ 出演/アンドリュー・スコット、ポール・メスカル 写真:Everett Collection/アフロ

[仕事に行き詰まった時には?]

大作を紹介するのは避けようと思ったのですが、どう考えても『グランツーリスモ』しかない。

これってレースゲームが基でしょ?って、観に行かなかった人は多かったと思います。
確かにレースが軸になっていますが、仕事についてしっかり描かれているし、生き方指南、親子愛もある。ゲームから本当のレーサーになるって、とても難しいことだと思うけど、簡単にのし上がったわけではない。体調を崩しながらもちゃんとトレーニングしていきます。これが仕事の仕方。みんな仕事を甘く見すぎだと思います。

大体、行き詰まるのは自分ができないから。一番ダメなのは「この会社のために何をしたらいいんだろう」と悩み、「発揮できるものがないから辞めたい」って考え方。じゃあ自分のスキルを上げて行きたい会社に行ってくださいとしか言えない。
人生は思った通りには行かない。行き詰まっているってことは、恐らく自信を失くしていると思うので、ぜひ本作を観て自身を奮い立たせてほしい。

この作品で一番感動したのは親子の関係。今までずっと反対してきたお父さん。
日本ってそういう親が多いですよね。自分の子どもの人生に口出しをする。本当に日本の長男は気の毒だなって思います。本人がやりたくないものを押し付けちゃダメ。うちの親はまったく私の人生に口出しをしなかったので、18歳で日本に来ることができました。
母親には馬鹿にされたから、むしろ好都合でした。親も観るべき映画だと思います。

仕事に行き詰まった時に観たい映画

『グランツーリスモ』(2023)監督/ニール・ブロムカンプ 出演/デヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルーム 写真:Everett Collection/アフロ

[人間関係に悩んでいる時は?]

おすすめしたいのは『チョコレートドーナツ』。

ゲイカップルとダウン症の男の子の物語ってことで、なかなかテレビでは放映できませんでしたが、「王様のブランチ」で傑作は傑作と大きく紹介したら、初週1館だった上映館が次週には140館に拡大。映画コメンテーターとして初めてお役に立てたと感激するくらい、ヒットした思い出深い作品です。

男の子のお母さんが、男やドラッグに溺れて子どもをほったらかしにしていたところ、同じアパートに住む隣人が気にしてくれた。人間関係で一番大事なことは「どうしたの」って気にすること。気にするから仲よくなり、生きる希望が生まれ、恋に落ちることも。

障がい者の方の番組をやっているレモンさんという方がいます。彼は「お節介が命を救う」と毎回言うんです。今どうしているのかなって気にして、電話したことで自殺しようとした人を救えたり。

みんな悩みすぎだと思います。いろんな人間関係がありますが、悩むべき人間関係は仕事と親子だけ。親とは縁は切れない。仕事はやっぱり気を遣わなければならない。面倒くさい人もたくさんいるし、意見が合わない人も多いでしょう。
でも、そこを話し合う、ちゃんとコミュニケーションをとる。
逆に友達の人間関係は切ればいい。あなたを悪く言う人は友達じゃない。あなたがその友達よりもスキルを持っているから悪く言われるだけ。

20代の時は誰とでも友達になりました。でも、40代の時にわかってくる。この人は合わないし、必要ないなって。
仕事ではいろんな人と付き合うから、プライベートでは好きな人と一緒にいたい。2〜3人でいい。たくさん友達がいるなんてどうでもいいことだと思います。
しかも年とともに価値観は変わります。変わらないってことは同じ人間でいるわけだから、何も成長していないのと一緒。だから価値観は変わっていい。結局、付き合っていくうちに合わなくなることはよくあるし、人間関係でそんなに悩まなくても全然大丈夫です。

人間関係に悩んでいる時に観たい映画

『チョコレートドーナツ』(2012)監督/トラヴィス・ファイン 出演/アラン・カミング、ギャレット・ディラハント 写真:Collection Christopher/アフロ

[誰かに背中を押してほしい時は?]

背中を押してくれる少し年上の人たちのことを考えて、低予算の作品ですが、すごく好きな『また、あなたとブッククラブで』を。

主演のダイアン・キートンが大好きで、彼女の出演作をよく観ます。大体90分で終わるのがいい。しかも彼女自身が「おばさん」と呼ばれる世代。おばさんの何がいいかって、生きてきた経験がすべてあるから。
私も若い方に向けての番組で、更年期や生理について話すことが増えました。私なら人生の生理についてかなり話せます。だから、おばさんが主人公の映画ってすごくいい。私も若い時に、もっとそういった作品を観たかった。

本作はエロティックな小説を読んで、おばさんたちがムラムラする面白い場面もあります。娘たちは「恋してるわ、お母さん」とか言っているけど、放っといて!何歳になっても遅くないんだってことをもっと早く知りたかった。

自身のエンディングが見える方にとったアンケートでは「自分らしく生きればよかった」とみんな言うんですって。だけど、自分らしく生きようと思ってもそれがよくわからない。日本は誰かモデルがいないとね。

本作にはジェーン・フォンダという大先輩も出演しています。元気をもらえるし、おしゃれ。一つのものに対して何かを話し合うっていうのは素敵なことだと思います。お互いを知るすごくいい機会にもなる。
若い時は意見が違うと疎遠になることも多々ありますが、年を取ると「そういうふうに思うんだ。面白い見方だね」と、器が大きくなります。だから、たまに観直したくなる。同年代の方はきっとハマると思います。

誰かに背中を押してほしい時に観たい映画

『また、あなたとブッククラブで』(2018)監督/ビル・ホールダーマン 出演/ダイアン・キートン、ジェーン・フォンダ 写真:Everett Collection/アフロ

[素直になれない時は?]

スウェーデン映画『幸せなひとりぼっち』をどうしても紹介したくて。

今まで7回ぐらい観ていますが、毎回違うところで感動し爆笑する。じんわりと、傑作と呼べると言うか、語り継がれる作品です。

基本的に、映画は人間関係を描いているもの。生きる希望を失くし自殺しようとしているのに、向かいに引っ越してきた移民家族がタイミング悪く(!)訪ねてきてまったく死ねない。それが本当に面白くて。

本作のハンネス・ホルム監督にインタビューしたことで、私は映画コメンテーターとしての考え方が変わりました。原作は分厚い小説ですが、「映画化するにあたってプレッシャーだったり、どこをそぎ落とすのか悩みませんか」と聞いたら、「あなたは映画を紹介する時、映画の話をしていますか」と聞かれたんです。「はい」と答えると、「違うんですよ、LiLiCoがLiLiCoの話をしているんですよ」って。そこでハッと気づいた。
結局私というフィルターを通して喋っているから私の話なんです。監督も「小説も取り入れていますが、これは私の話です」と。なるほど、私はこの映画でどういう気分になるかと、映画ソムリエみたいな存在として話していたのです。

この映画は感動作だと思われがちですが、ほぼコメディ。大切に生きなきゃいけないと教えてくれる、素直になれる映画です。
今回はテーマに絞り6本の作品を紹介しました。その感動をあなたの人生に取り入れてください。

素直になれない時に観たい映画

『幸せなひとりぼっち』(2015)監督/ハンネス・ホルム 出演/ロルフ・ラッスゴード、イーダ・エングヴォル 写真:Everett Collection/アフロ
LiLiCo

LiLiCo

りりこ/1970年、スウェーデン・ストックホルム生まれ。スウェーデン人の父と日本人の母を持つ。18歳の時に歌手を目指して来日し、89年から芸能活動をスタート。5年にわたるホームレス生活など苦難の日々を乗り越え、現在、TBSの情報番組「王様のブランチ」で映画コメンテーターを務めるほか、TV・ラジオ・雑誌など多数のメディアで活躍。映画やアニメでの声優を務めるほか、イベントのMCやトークショーなど精力的な活動を行う。

取材・構成/岡﨑優子 撮影/平岩 享

人生を支えてくれる映画 目利きのおすすめ名作鑑賞
北川れい子
テルマ&ルイーズ
走り出した女たちはもう止まらない

『テルマ&ルイーズ』(1991)監督/リドリー・スコット 出演/スーザン・サランドン、ジーナ・デイビス、ハーベイ・カイテル 写真:Everett Collection/アフロ

「すべてが新しく見えるの。未来に希望があるって気分よ」とテルマが言う。ハンドルを握るルイーズも日焼けした顔で笑っている。
旅に出る前までは威張り屋の夫の顔色ばかりうかがう世間知らずの主婦だったテルマ。テルマより年上のルイーズは、男も世の中も油断できないことが身に染みているウェイトレスだった。
けれども二人は、未来に期待できないことは互いに痛いほど分かっている。この危険な旅でやっと手にした自由が長く続かないことも。それでも二人は、旅の相棒であるスカイブルーの1966年型フォード・サンダーバード・コンバーチブルから降りる気は全くない。赤茶けた石灰岩層の荒涼とした大地。どこまで行けるか。逃げ切れるか。彼女たちに今できることはこのまま車で走り続けること。

それにしても第64回(1991年)アカデミー賞の脚本賞(カーリー・クーリ)を受賞した『テルマ&ルイーズ』(リドリー・スコット監督)の説得力のある彼女たちの暴走は、いま観ても血が騒ぐ。
描かれるのは、男と世間の理不尽さに思わずキレてしまった女性二人の逃避行。米南部のアーカンソー州に住む彼女たちは、当初、1泊2日の旅の予定だった。が、ふと立ち寄った酒場でハシャギ過ぎたテルマがレイプされそうになったことから、助けようとしたルイーズは怒りにまかせて男を射殺してしまうのだ。

思えば『テルマ&ルイーズ』が登場するまで、旅する映画、ロードムービーはほとんど男たち専用のステージだった。それもおおむね世間からはみ出した男たちのステージ。
1960年代から70年代にかけて一世を風靡(ふうび)したアメリカン・ニューシネマの多くはその路線で、たまに女性が絡んでも、男たちを見送るか、男たちから置き去りにされるのがせいぜいだった。『俺たちに明日はない』『明日に向って撃て!』『イージー・ライダー』などなど。

甘ったれだったテルマが、逃避行中にどんどん逞(たくま)しくなり、姉さん格のルイーズ顔負けの行動をとるのが痛快で、演じるジーナ・デイビスから目が離せない。そしてルイーズ役、スーザン・サランドンの過去の痛みを隠したタフな演技。
そうそう、当時まだ無名のブラッド・ピットが、彼女たちを煙にまく小悪党を演じているのも要注目。

この作品はなるほど、殺人犯として指名手配された彼女たちの逃避行だが、女性の権利を主張するフェミニズム映画と一線を画すのは、彼女たちが男や世間に見切りをつけ、ひたすら車を疾走させる姿がみごとに充実しているからだ。
後半の舞台となるカリフォルニア州とユタ州周辺の壮大な景観も彼女たちの冒険にふさわしく、しかもあくまでも軽やか。自分に向かって走り出した女性はもう止まらない、という傑作だ。

北川れい子

きたがわ・れいこ/東京生まれ。国家公務員の傍ら、1970年代の後半から映画評を書き始める。84年に退職。以降、各紙誌の映画評を担当。現在「キネマ旬報」「週刊漫画ゴラク」「週刊新潮」などに執筆。著書『勝負 ニッポン映画評』(ワイズ出版)ほか。大の猫好き。

人生を支えてくれる映画 目利きのおすすめ名作鑑賞
宇田川幸洋
ワイルドバンチ
死に花の狂い咲きの美しさが限りなく生きるちからを与える

『ワイルドバンチ』(1969)監督/サム・ペキンパー 出演/ウィリアム・ホールデン、アーネスト・ボーグナイン、ロバート・ライアン 写真:Photofest/アフロ

爆発的なエネルギーにみちた西部劇である。サム・ペキンパー監督作品。
このごろは正義のヒーローばかりが幅をきかせている観のあるアメリカ映画だが、かつてはアウトローを主人公にして、彼らに夢を託すというか、心情をかさね合わせる映画が多かった。特にこの映画が生まれたころ(1969年)は、反体制的な気分が世の大勢だったからなおさらのこと。

西部劇はそれまでもジェシー・ジェームズ、ビリー・ザ・キッドをはじめとする実在のアウトローをカッコよく美化してえがいてきたが、『ワイルドバンチ』がえがくのは、西部開拓の伝説的な時代が終わった20世紀になっても、まだ生きのこって強盗をつづけている集団。
"ワイルドバンチ"という名称は、同じ年につくられた『明日に向って撃て!』のブッチとサンダンスがひきいた"壁の穴ギャング"の別称だが、直接にその実在した集団の残党をえがいているのか、それとも、それになぞらえているのか、どちらともとれるよう。

ジョージ・ロイ・ヒル監督がえがいたブッチたちの集団にくらべると、こっちのワイルドバンチは見た目からしてババッちい。リーダーのウィリアム・ホールデンだけは、きちんとしているし、サブのアーネスト・ボーグナインもまあまあだが、最古参さんのエドモンド・オブライエン爺さんなんか、口のまわりが噛みタバコの汁だらけみたいで不潔感あふれる。
ところが、彼らを追跡する集団は、もっと汚い。追跡・逮捕(殺戮(さつりく))に成功したら特赦という条件で刑務所から駆りあつめられたアウトローたちだ。リーダーのロバート・ライアンだけは、きちんとしている。かつてはホールデンの盟友だった。

開巻から町じゅうをまきこんだ大銃撃戦が展開される。銀行を襲うワイルドバンチを、待ち伏せて街並みの屋根の上にいた追跡隊が銃撃するのだが、町民にも見さかいなく銃弾を浴びせるので、阿鼻叫喚(あびきょうかん)を絵にかいたよう。それを細かいカッティングとスローモーション映像でえがき出した迫力は、当時ものすごくおどろいた。
その後、この手法をまねする映画が輩出したのは当然だが、元祖サム・ペキンパーを超える者はない。
途中にもたくさんのアクションがあり、ラストには最大の見せ場が来る。メキシコに逃れたワイルドバンチが、マパッチ将軍(エミリオ・フェルナンデス)の政府軍に対して牙をむくのである。
民衆に対する政府軍のやりかたへの反感もあり、直接にはバンチの一員であるメキシコ人青年のための復讐だが、最後にのこった、たった4人で、無数の軍隊と撃ち合う。死に花の狂い咲き。ババッちいアウトローが死んでいく姿の美しさにとなる。大量の死が、見る者に限りなく生きるちからをあたえる、この不思議!

宇田川幸洋

うだがわ・こうよう/1950年、東京都生まれ。映画評論家・山田宏一氏のアシスタントを経て72年に映画評論家デビュー。著書に『無限地帯−from Shirley Temple to Shaolin Temple』(ワイズ出版)ほか、訳書に『キン・フー武侠電影作法』(山田宏一共著、草思社)などがある。

人生を支えてくれる映画 目利きのおすすめ名作鑑賞
斉藤博昭
バグダッド・カフェ
人生の希望を見いだせる美しき物語

『バグダッド・カフェ』(1987)監督/パーシー・アドロン 出演/マリアンネ・ゼーゲブレヒト、CCH・パウンダー、ジャック・パランス 写真:Everett Collection/アフロ

一本の映画が、その後の人生を変えることもある。
観た本人が気づかないレベルで、明日からの日常に少しだけ希望を示すのが映画のマジックなら、『バグダッド・カフェ』はそんな作品だ。

バグダッドと聞くと中東がイメージされるが、アメリカにもシカゴとロサンゼルスを結ぶ有名な国道、ルート66のラスヴェガス近くにバグダッドという地名があり、そこにポツンと立つ一軒のカフェに、ドイツ人旅行者のヤスミンがたどり着くところから物語が始まる。

旅行中に車が故障し、夫と口論をした末に、一人で重いスーツケースを引きずって歩いてきたヤスミンは明らかに怪しい存在。英語もそれほど話せないが、悠然と周囲に溶け込もうとする彼女を筆頭に、とにかく登場人物たちのキャラが際立ち、まずそこに魅入ってしまう。
カフェのオーナーであるブレンダは常に何かに苛立(いらだ)ち、ヤスミンを警戒。夫のサルはだらしなく、息子はピアノばかり弾いている。娘はカフェの手伝いもせず、自由奔放。
隣接するモーテルには入れ墨師の女が定住し、絵を描くのが趣味の老人、テント暮らしの青年もいて……。決して仲がよいわけではなく、微妙な距離感で日常を送っていた彼らが、ヤスミンという闖入者(ちんにゅうしゃ)によって自分を見つめ直したり、癒やされたりするプロセスは、時代や国を超えた人間関係の理想型のよう。それを押し付けがましくなく、サラリと軽やかに展開していくので、いつしか心地よさに包み込まれる。

忘れがたいシーンがいくつもある。ブレンダは息子の弾くピアノを雑音かのように怒るが、ヤスミンはその音色に陶酔。息子は初めて音楽を共有できる相手を見つける。やりたいことを貫けば、いつかわかってくれる人が必ず現れるのだ。また砂漠や大空をバックに、テントの青年がブーメランを飛ばす場面が何度か出てくるが、それは「大切な相手は自分の元に戻ってくる」という作品全体のテーマを表していたりもする。

私がこの映画を観たのはニューヨークの小さな劇場だった。一つの仕事を辞め、次の仕事を探すまでの間に長期のニューヨーク旅行に出た時だ。
最初こそ自由を満喫していたものの、やがて人生の次のステップにどう向き合うか、その選択が心に重くのしかかってきた。若気の至りとはいえ、何も考えずに旅に出た自分を後悔したりもした。モヤモヤした気分を抱えながら、やけに鮮やかな色のポスターに惹かれ、タイトルからまったく物語を想像できないその映画のチケットを買った。まったく知らない場所で、純粋な動機で相手に接するヤスミンの姿に、この先の生き方をちょっとだけ教えられた私は、心に刺さっていた小さなトゲが抜けたような気もした。ささやかだけど大切な人生の希望への光。それを見いだした時、『バグダッド・カフェ』は忘れ難い一作となる。

斉藤博昭

さいとう・ひろあき/映画関連のレビューやインタビューを多くの媒体に寄稿。主な媒体は「VOGUE」「Safari」「シネマトゥデイ」「スクリーン」など。Yahoo!ニュースではエキスパートとしてコラムを執筆。日本映画ペンクラブ会員。アメリカの映画賞である放送映画批評家協会賞の投票会員。

人生を支えてくれる映画 目利きのおすすめ名作鑑賞
森田真帆
バック・トゥ・ザ・フューチャー
アバウト・タイム ~愛おしい時間について~
落ち込んだ時に観る珠玉の2作

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)監督/ロバート・ゼメキス 出演/マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、リー・トンプソン 写真:Bridgeman Images/アフロ
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)監督/ロバート・ゼメキス 出演/マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、リー・トンプソン 写真:Bridgeman Images/アフロ
『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(2013)監督/リチャード・カーティス 出演/ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ 写真:Photofest/アフロ
『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』(2013)監督/リチャード・カーティス 出演/ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ 写真:Photofest/アフロ

悲しくなったり、救いようがないくらいに落ち込んだり、人生にはどうしようもなく辛いことがたびたび起きてしまう。

私も44年の人生で、多くの裏切りを経験したし、自分で選択を間違えた失敗を、何度も何度も犯してきた。
失恋だって何回もしたし、失恋どころか、離婚も3回して、そのたびに馬鹿な自分を恨んだり、「なんであの時」を思い返してきた。3回目の離婚の時なんて、結婚式から10日後にいきなり電話越しで離婚を打診され、ショックのあまりに男湯に入ってしまうくらいの打撃をくらってしまった。
当時は、毎日布団に潜っては、旦那さんが急に別れを切り出した理由を何度も思い返しては「あんなことをしなければよかった」と後悔したりしていた。

そんなネガティブな気持ちに囚われてしまった時、携帯電話も切って、自分の周りに何も邪魔を置かずに私は映画を観る。そしてそんな最悪な気分の時に必ずと言っていいほど観る映画がある。時間を巻き戻してやり直したい時に観る映画は、何と言っても『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だ。

子どもの頃から、一体何回観返したか分からないほど大好きなこの映画には、何よりもまず「時間が経つのを忘れる」ほどに楽しめる面白さがたくさん詰まっている。コンプレックスだらけのマーティーが、自分の失敗をやり直すどころか、自分が生まれる前まで戻っちゃうという突き抜けたストーリーからして奇想天外すぎて最高なのだが、大人になってから今一度映画を観てみてほしい。
自分が落ち込んだ時に観るこの映画は、きっと違った作品に見えてくるはず。

そしてもう1作品は、同じくタイムリープをテーマにした映画『アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜』だ。
この作品は『ラブ・アクチュアリー』のリチャード・カーティス監督が、脚本と監督をした作品。主人公のティムは彼女もいない冴えない男子だが、ある日父親から自分の家族がタイムトラベラーであることを知らされる。時空を超えてタイムトラベルをしながら恋人探しを始める、という物語。
時間の中を旅しながら、主人公が見つけていく日常の幸せや、小さな喜びに、観ているこちらまで、心が洗われていく感覚に包まれていく。そして、気づいたら「あの日に戻って、すべてをやり直したい」という気持ちが消えて、「あの日の失敗があったからこそ、今があるって思えるように未来を変えていこう」と思ったり、「もしかしたら、この別れがあったからこそ、次の素敵な出会いが待っているのかも!」と思えたり。
とにかく1日1日を大切にして、いなくなってしまった男のことなんか考えずに、目の前で一緒に笑ってくれる友人や家族を大切にすることにフォーカスしよう、と思えるはずだ。

森田真帆

もりた・まほ/18歳で渡米、リー・タマホリ監督のアシスタント、ウィル・スミスの会社でインターン経験後、製作現場で働き、20歳で帰国。ライターほか、現在は『When I was ahuman』の日本プロデューサーとして製作準備中。別府ブルーバード劇場のプログラムアドバイザーも務める。

映画は明日を生き抜く発想をくれる人生の先生

井筒和幸

映画監督としてだけでなく、コメンテーターとしても活動する井筒和幸監督。特に映画については歯に衣着せぬ辛口評論で、映画ファンの信頼も厚い。「映画は楽しい以上に怖いもの」と笑う井筒監督に多大な影響を与えた作品をうかがった。


僕の出発点ともいえる戦争映画

自分は映画にたくさんのことを教えられてきた。映画は、明日を生き抜く発想をくれる野外授業の先生のようなもの。でも、映画に振り回されてもきました(笑)。
人間というのはみんな何かに振り回されて生きている。僕は映画にたくさんの転機を与えられてきたし、子どもの頃の映画との出会いが、間違いなく人生の大きな転機だったね。

子どもの頃の僕にとって、映画は楽しさ以上に怖いものだった。

強烈に覚えているのが、小学5年生の時に親父に連れられて大阪の映画館に観に行った『陸軍残虐物語』。戦時中の大日本帝国陸軍内の軍紀の厳しさを描いた、佐藤純彌(さとうじゅんや)監督のデビュー作。
三國連太郎さん演じる純朴な主人公の新兵が、西村晃(にしむらこう)さん演じる意地の悪い上官にいじめられまくるんです。陸軍内部なんて知らないのに、呼吸を忘れるほど夢中になり、映画って息が詰まるもんだなと思った。
その頃の僕は楽しいことに飽きていて、『ゴジラ』シリーズなんて観ても偽物にしか見えなかった中、身体が縮むほどの怖さを感じられて、面白かった。これが僕の出発点ともいえる。

それからたくさんの戦争映画を観て、鬼気迫るこの世の地獄に圧倒され、戦争の怖さや人間の怖さなどあらゆるものを教えてもらった。
映画の表現力というものに吸い込まれましたよ。

当時の親父は、自分が観たい映画に連れて行っただけ。とはいえ、無理やりではないし、僕も嫌なら行かなかった。観せたい映画や好きそうな映画だけを観せるのがいいわけではないと思う。無理やり観せるのは駄目だけど、子どもでも直感でわかることはできるので、大人向けとか子ども向けなんて考えず、いろんな映画を一緒に観るのはいいことだと思いますよ。

人間のありようを教えてもらった映画

自分で映画館に通い始めた頃の映画として特に印象深いのは、中学2年生の時に見た『ブルー・マックス』。

第一次世界大戦末期のドイツ空軍を舞台に『ティファニーで朝食を』でオードリー・ヘップバーンの相手役を務めたジョージ・ペパード演じる平民出身の主人公パイロットが、ブルー・マックス勲章を目指して戦果をあげ、貴族社会の中でのし上がっていく。
しかし、悲劇的な結末を迎える戦争映画。主人公はかなり荒っぽくて、上官の妻を寝取ったりもする。このウルスラ・アンドレスという初代ボンドガールのグラマーな女優の演じた妻が妖艶なのもいい。

『007』シリーズのジェームズ・ボンドはリアルに感じられなかったけど、『ブルー・マックス』の血みどろで人間のドロドロした部分も描く成り上がりの物語は、色っぽい妖艶なお姉さんが出てくることも含めて(笑)、見たことのないリアリズムを感じたし、心が躍った。
それが強烈すぎて、友達を誘って次の日にまた観に行きましたよ。人間のありようを教えてもらった映画だと思います。

『ブルー・マックス』(1966)監督/ジョン・ギラーミン 出演/ジョージ・ペパード、ウルスラ・アンドレス 写真:Collection Christopher/アフロ

高校生の時に観たアメリカン・ニューシネマの衝撃

高校生になって最初に観たのは、『猿の惑星』。

これには驚かされました。人間文明そのものをからかっていて、地球が滅んで猿に支配されていることにびっくりしたし、当時はこの話題やうわさで持ち切りだった。ラストを知らずに観に行ったけど、知っていても観に行ったと思う。
今はネタバレとかうるさいけれど、映画はあらすじや結末だけが重要じゃない。いい映画というのは、あらすじや結末を知っていても面白いんです。

この頃からアメリカン・ニューシネマにはまっていくんだけど、その走りの『俺たちに明日はない』は、悪名高き若いギャングのカップルの衝撃作だということで観に行った。でも、自分たち高校生にとって本当に衝撃的だったのは、『イージー・ライダー』と『真夜中のカーボーイ』。当時、1968〜1969年頃の日本は、大学生たちの全共闘運動で世の中が騒然としている時代。そこに現れたのが、反体制的なアメリカン・ニューシネマだった。

『猿の惑星』(1968)監督/フランクリン・J・シャフナー 出演/チャールトン・ヘストン、キム・ハンター、ロディ・マクドウォール 写真:Photofest/AFLO

『真夜中のカーボーイ』は、ただのカウボーイ映画かと思ったら、ニューヨークで生きられなくなった男娼とホームレスがマイアミに行こうとする話。

悲劇的な結末を迎える。夢を持って田舎から出てきた男がこうなるのかと、都会の底辺で生きる人間のありようをまざまざと見せつけられて、哀れな話でね……、涙が溢れて感動した。切ない音楽も最高だったな。

『真夜中のカーボーイ』(1969)監督/ジョン・シュレシンジャー 出演/ジョン・ヴォイト、ダスティン・ホフマン 写真:Mary Evans Picture Library/アフロ

自由とは何かを教えられた映画

『イージー・ライダー』には、もっと衝撃を受けました。

本国で大ヒットした問題作だと、うわさがうわさを呼んでいたし、並んで走る二台のバイク、主人公の横顔のシルエットなど、ポスターからかっこよくて洒落ていた。ピーター・フォンダとデニス・ホッパー演じるヒッピーの二人組が、ハーレーダビッドソンのカスタムバイクで放浪の旅に出るロードムービーで、自由とは何かを教えられました。

アメリカ南部の保守的な地区ではヒッピーがあからさまに差別され、実はまったく自由のないアメリカ社会の現実を見せつける。二人が出会う弁護士をジャック・ニコルソンが演じていて、彼が同じ自由でもフリーダム(持って生まれた自由)とリバティ(法の下での自由)は違うと教えてくれる。
その弁護士は、長髪に革ジャンという身なりだけで差別されているヒッピーの二人こそ自由の象徴だと、野宿した夜にドラッグをやりながら語り、そこで観客の僕らも自由とは何かを学ぶんですよ。

ラストも衝撃的で、編集も斬新だし、説明カットなしに頭の中でイメージさせるよう撮っているから、観終わった後、観客がみんなため息ついてましたよ。表現って何かを教わったとも思います。

動乱が起きたことでアメリカに「自由」を求めて亡命してきた、ハンガリー出身のラズロ・コヴァックスが撮影監督をしたことも納得できたし。テンポよく進むシンプルなカット割りの新鮮な画面が刺激的だった。
いま観直すと、謎のカットだらけだし、平板なんだけど(笑)、わざとらしくなく淡々と被写体を撮っているのが、かっこよかったし、「俺たちにも撮れるんじゃないか?」と思わせてくれた最初の映画。まさに"イージー・ムービー"だと思ったわけですよ(笑)。

それからすぐに自分で8ミリカメラを回し始めたと思います。そして、映画には胸を詰まらせるようなメッセージがないと駄目だし、自由とは何かをテーマにした映画を撮って生きていきたいと思うようにもなっていきました。

『イージー・ライダー』(1969)監督・出演/デニス・ホッパー 出演/ピーター・フォンダ、アントニオ・メンドーサ、 ジャック・ニコルソン 写真:Album/アフロ

嫌なものも自らで開拓して変えていけばいい

やっぱり人間というのは自由に生きたいし、自由に生きられない社会っておかしい。では自由に生きられる社会とは何か?親の言いなりで生きる必要はないし、どんな仕事に就こうが自由だと思う。

でも、やりたくない仕事をするほど不自由なことはない。なぜ会社や組織に自分の時間と身体を売らなければいけないのか、その代償で対価を得ることでしか生きられないのかということに、僕は引っかかった。
自分のやりたいことをやって、社会の中でみんなと普通に生きていくことはできないものかと。それで映画は観るのも好きだったから、作ってもいいんじゃないかと。

芸能文化というのは、俺の表現を観てくれ、話を聞いてくれという大衆の叫びで、庶民社会が生んだもの。それは誰もが自然と観たくなるもので、映画は大衆芸能文化の最先端にあるものだと思っているから、作りたいものを作れば誰かが観てくれると思った。そうすればおまんまくらいは食えるかなと(笑)。

僕は映画監督を仕事だと思ったことはないし、仕事だと思っていたら、途中で辞めていたと思います。だから、自分のやりたい映画しか撮ってきていません。若い頃に名を売るために受けた映画もあるけれど、それも旧態依然とした映画界そのものをぶっ壊して、自由な新しい映画界を作ってやるという思いで取り組んだもの。やりたいことだけやって自由に生きるなんて無理だと思うかもしれないけど、今いる自分の業界や会社が嫌なら、その業界や会社を変えていく気持ちで取り組めばいい。
儲けばかりに走るポリシーのない会社が嫌なら辞めて、別の会社を探せばいい。苦しい時もあるだろうけど、新しい誰かとの出会いもある。旧態依然なことが我慢ならないなら、自分で潰していくというか、開拓していくようなことって大事だと思いますね。嫌な仕事をする必要はないし、文句だけ言っていても仕方ない。
誰もが自由に生きるべきだし、自分のやりたいことをやって生きる方法を探してほしいと思います。

井筒和幸

井筒和幸

いづつ・かずゆき/1952年、奈良県生まれ。高校在学中から自主映画を製作。1975年にピンク映画で映画監督デビュー。初の一般映画監督作となる1981年の『ガキ帝国』がヒットし、日本映画監督協会新人奨励賞を受賞。2004年の『パッチギ!』ではキネマ旬報ベスト・テン日本映画監督賞をはじめ多数の映画賞を獲得。主な映画監督作に『岸和田少年愚連隊』(96)、『のど自慢』(98)、『ゲロッパ!』(03)、『ヒーローショー』(10)、『黄金を抱いて翔べ』(12)、『無頼』(20)など。コラムニストやコメンテーターとしても活躍する。

取材・構成/岡﨑優子、天本伸一郎 撮影/平岩享

いま明かされる『スター・ウォーズ』の舞台裏
『ルーカス・ウォーズ』が教えてくれた
ジョージ・ルーカスの映画的人生

『スター・ウォーズ』誕生までの物語を描いたフランス発コミックが発売。シリーズの舞台裏では、波乱に満ちた出来事が日夜繰り広げられていた!?
夢を諦めずにいるすべての人たちに捧げられた、人生を教えてくれる一冊。


九死に一生を得て映画の道へ

1977年に公開され(日本公開は78年)、映画史に残る大ヒットを記録した『スター・ウォーズ』。約半世紀の間に旧三部作、新三部作、続三部作が公開、近年も「マンダロリアン」などドラマシリーズがディズニー・チャンネルで放送と、その世界観は今なお広がり続けています。

この幅広い世代から愛される作品を製作したのが、『インディ・ジョーンズ』シリーズでも知られるジョージ・ルーカス。
5月25日に行われたカンヌ国際映画祭の閉幕式で名誉パルム・ドールを授与されたことも話題となりました。

ところが無名時代はスタジオとの闘いの日々。幼少期から反抗的でカーレースに明け暮れ、挙句の果てには死の淵をさまようほどの大事故に見舞われます。九死に一生を得たルーカスが人生を考え直して選んだ道は映画製作。学生時代から注目されるも、監督デビュー作『THX-1138』(71年)のスタジオ評価は厳しくズタズタにされ、多額の借金を負うことに。

夢の実現を目指した闘いの日々

大ヒットした第2作『アメリカン・グラフィティ』(73年)もスタジオは評価せず、『スター・ウォーズ』の制作に興味を示したのは20世紀フォックスだけ。しかもルーカスの構想には懐疑的で最終契約をしないままでした。
その間、難航するキャスティング、俳優同士の不仲、主演俳優の不倫など思いもかけないトラブルが降りかかります。
撮影現場も、2日目に機材を運ぶトラックから出火。その翌日には猛烈な嵐が現場を襲いセットの一部が崩壊、トラックは身動きできなくなります。しかもこの混乱の中、アルジェリア軍から兵器を運んでいると疑われるなど、スタートから災厄が続きます。

さらに出来上がった作品を見たスタジオ幹部のほとんどが「駄作」と判断。ところが公開するやいなや最高記録を続々と塗り替える社会現象となったのです。グッズを制作する権利も、ルーカスが確保し、その後、膨大な利益を得ることになります。

「己の理想と夢を実現するために奮闘を続ける者たちの苦悩に満ち、しかし一方では形になりつつある夢の実現に興奮と震えを感じながら前進し続ける姿がありのままに描かれている。そこがいい」と監修の河原一久氏。
『ゴジラ-1.0』でアカデミー賞視覚効果賞を受賞した山崎貴監督も「ページをめくるたびにアドレナリンが背中を駆け登る」と大興奮。「困難のすべてが大逆転のスパイス」とも評されたこの物語には、元気がもらえます。

5月4日「スター・ウォーズ」の日に発売! 『ルーカス・ウォーズ』作/ロラン・オプマン 画/ルノー・ロッシュ 翻訳/原正人 監修/河原一久(キネマ旬報社刊/4200円+税) ⓒ Kinema Junposha.Co.Ltd.2024 Printed in Japan ⓒ Éditions Deman 2023

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