教えて尾木ママ!育児のお悩みひろばのヘッダー

社会情勢がめまぐるしく変わる中、子どもをめぐる環境も大きく変化し、子育ての悩みはますます複雑に。そんな時代に大切にしたい育児の視点を尾木ママこと尾木直樹氏にお聞きするとともに、読者のお悩みにも答えていただきました。


子どもを尊重し、リスペクトすることが大事。
その思いに応える力が、子どもにはあるはずです。

教えて尾木ママの画像①

困難な社会情勢でも子どもの”生き抜く力”を見守る

——令和になり、子どもに関わる社会問題が多様化かつ深刻化しているように感じます。その中でもどのような課題を注視されていますか?

尾木 一つはSNSですね。私もInstagramやTikTokをやっていますし、今や社会生活を行う上で避けては通れません。過度な使用や犯罪被害への注意が必要なのはもちろんですが、親はSNSの世界を生き抜こうとしている子どもの様子を見守ることも大事です。コロナ禍のことを思い出してみてください。あれだけ大変な時期を、子どもたちはつらい思いをしながらもちゃんと生き抜いてきました。これはすごいことですよね。子どもにはそうした力があるわけです。

また、SNSの良い所は世界とつながれること。例えば、世界で起こっている戦争も昔に比べてリアルに感じることができます。SNSで見聞きしたことについて、親子でさまざまな議論ができると良いですよね。

一方で、SNSで蔓延(まんえん)しているフェイクニュースについては、ネット上には偽情報・誤情報も多いということを子どもに認識させるとともに、本や新聞などの一次資料にもきちんと触れさせるようにし、フェイクニュースを見破る力を養わなければなりません。

——尾木さんは性教育にも力を入れていらっしゃるそうですね。

尾木 日本は海外に比べて性教育の分野で取り残されています。その必要性を訴える声は以前から多いのですが、学校で体系的に教えられていないのが現状です。現在、日本ではさまざまな団体が国際標準の包括的性教育を広める活動を行っていますが、そのハブとなるような団体(コラム参照)を2023年に設立しました。学校を拠点に包括的性教育が実践されることで、子どものウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に満たされている状態)の向上につなげたいと考えています。

尾木ママが代表として2023年に立ち上げたのが「CSE HUB」です。CSEとは英語で包括的性教育(包括的セクシュアリティ教育)を意味するComprehensive Sexuality Educationの略。包括的性教育が学校で実践されることを目指し、国内外の団体と連携しながら必要な情報や知識を学ぶ場の提供、インターネット上での情報発信など、さまざまな活動を行っています。

HP ▶︎ https://csehub.org/

子どもをリスペクトし自己肯定感を育む

——子どものウェルビーイングも今の時代に重要な課題なのでしょうか。

尾木 現在、不登校の子は高校も含めれば約42万人、小中学校のいじめ認知件数は76万9000件とされていて、それぞれ急増しています。この数字は子どもの生きづらさを証明していますよね。特に日本の子どもは自己肯定感が低いんです。競争社会の日本では他者との比較による相対評価が当たり前。

でも、ウェルビーングの視点から立てば決して良いこととは言えません。そうした世間の状況の中でも自己肯定感を育むには、普段からコミュニケーションを取り、家族で助け合うような家庭生活を送ることが重要です。忙しく生活を送る中、コミュニケーションをこまめに取るのは難しいと思うかもしれませんね。でも、コミュニケーションとは直接顔を突き合わせて話すだけではありません。 LINEのようなツールを使ってもいいですし、家事に子どもを巻き込んでみるのもありです。

——普段から子どもとの関係を築くことが大事なのですね。

尾木 国は「こどもまんなか社会」というビジョンを打ち出し、こども基本法が施行されてこども家庭庁も発足し、これからは子どもが社会に参画する時代になります。だからこそ家庭でも子どもを尊重することが大事になってきますし、それに応える力量が子どもにはあるのです。先ほどもお話ししたように、大人はこの大変な時代を生きる子どもたちをもっとリスペクトするべきだと思いますよ。

Q1
小学1年生のわが子の同級生には英語の塾に通っている子が少なくありません。国際化が進む中、早くから英語を学ぶべきでしょうか?(40歳/女性 子どもの年齢:小学1年生)

A
まずは環境作りから
「周りの子が塾に行っているから」「早くから学んだ方が良いから」という理由で親が主導して学ばせるのではなく、英語が好きになるような環境を作ることが大事です。英語教育がコミュニケーション主体の小学生に比べ、文法を学習することが主軸となる中学では英語が好きだという子が減るという統計もあります。子どもが自然に英語に触れ、話したくなるような状況を作ってあげましょう

Q2
家庭での性教育はいつ頃から始めたら良いのでしょうか。親としての向き合い方も難しく、どういったことから教えれば良いのかもわかりません。(47歳/女性 子どもの年齢:5歳)

A
幼児期からの性教育が重要
SNS時代における性的トラブルを避け、自分と他者の心と体を大切にできる子を育てるためにも、幼児期からの包括的な性教育はとても大切です。5歳の子なら性教育用の絵本を使いながら子どもの興味関心を肯定的に受け止め、科学的にさらっと答えてあげましょう。また、プライベートパーツ(口・胸・性器・おしり)は命に関わる大切な場所だと繰り返し伝える中で、子どもが自分の体を大切に思えるようになって自己肯定感が高まります。

Q3
上の子と下の子がけんかをした時の対処法について悩んでいます。明らかに上の子の言動に問題があった場合、下の子がかわいそうでつい上の子を叱ってしまいます。(36歳/女性 子どもの年齢:1歳、小学2年生)

A
状況を見える化する
親はどうしても上の子を叱りがちですよね。でも上の子は「好きで先に生まれてきたわけじゃない!」と不満を感じてしまいます。ですから親としてはまず「どうしたの?」と聞いて状況を"見える化"すると良いです。また、その場では難しくても、後で言い分を十分聞くなど、上の子とだけ向き合う時間も取れると良いですね。

Q4
子どもが学校には行きたくないと言っています。優しくできる時もあるし、怒ってしまう時もあって自己嫌悪です。(32歳/女性 子どもの年齢:小学2年生、小学4年生)

A
時には厳しくしてもいい!
時には厳しくしてもいいんですよ。厳しく言ってしまったと思えば「ごめんね」と伝えれば良いのですから。その上で「学校に行きたくない」という思いはきちんと受け止めてあげましょう。その背景にある原因が何なのかを探ることが大事です。本人に直接聞くほかにも、学校の先生、ママ友など、周囲のいろいろな立場の方にも聞いてみて、子どものことを俯瞰するのが重要です。

Q5
反抗期の子どもがいます。特に大事なことに関しては話が進みません。進路についてはじっくりと話し合いたいのですが、親は口出しせず、見守るくらいが良いのでしょうか?(41歳/女性 子どもの年齢:高校2年生)

A
進路決定するのは子ども自身
進路について最終決定するのはあくまで子ども自身ですが、情報の量や社会経験、判断力の面では、まだまだ大人のサポートが必要です。思春期の「大人から自立したい」という気持ちを尊重して、「あなたはどう思う?」と尋ねながら、進路を自己決定する子どもを支援してあげてください。

尾木直樹

尾木直樹

おぎ・なおき 中学・高校の国語教師、法政大学教授など計44年間教壇に立つ。現在は同大学名誉教授を務めるほか、主宰する臨床教育研究所「虹」で教育現場に密着した調査・研究に取り組んでいる。多くの情報・バラエティ・教養番組、SNSでも活躍するとともに全国各地への講演活動も精力的に行っている。著書も多数。近著に『尾木ママ流生きるヒント 伸ばしたい9つの力』(きずな出版)。

photograph by 門脇光明 text by 難波美枝 illustration by 中小路ムツヨ styling by 奈良則子 hair&make up by 松本由美子

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