中年期に入ってふと襲われる気分の落ち込みや身体的不調。
気晴らしに運動してみたり、しっかり睡眠をとったりしても一向に改善されず、まるで抜け道のないトンネルに迷い込んだ感覚に。
そう感じたあなたは、「ミッドライフ・クライシス」かもしれない。
ネガティブなイメージがつきまとうこの言葉だが、見方を変えれば、その後の人生を良くするための気づきともいえる。
ここでは専門家に意見をうかがいつつ、ミッドライフ・クライシスを明るく乗り越えるための知識を紹介したい。


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ミッドライフ・クライシスの症状とは?

ミッドライフ・クライシスの代表的な症状を紹介。下のチェックリストにもトライして、自分の状態を見極めよう。

「ミッドライフ・クライシス」チェックリスト
4項目以上当てはまったら、ミッドライフ・クライシスの可能性があります。

  1. 「この道でよかったのか」と後悔し、人生を「やり直したい」と感じている。
  2. これまでの人間関係や趣味などにやる気や意味を感じられない。
  3. 体力や気力の衰え、外見の変化を強く感じるが、受け入れられない。
  4. 若い頃の理想と現実とのギャップに苦しむ。
  5. 仕事や家庭でやりがいを感じられず、無力感を覚えることがある。
  6. 家族との会話が減り、孤独感を覚えている。
  7. 自分の悩みや不安を話せる相手がいないと感じる。
  8. 抑うつ症状、強い焦燥感、不安感にさいなまれている。
  9. 睡眠障害や体調不良(のぼせ、冷えなど)が続いている。
  10. アルコールや買い物、ギャンブルなどに依存しがち。

きっかけは、ちょっとした不調や違和感⋯
ミッドライフ・クライシスの深みにハマった人たち

順風満帆の人生にある日突然暗雲が!? ミッドライフ・クライシス経験者の実例をご紹介。

子どものいない環境に慣れず頭痛や肩凝り、不眠症に陥り さらには更年期の不安も⋯。

子どもが独立し「空の巣症候群」に陥った40代女性

子どもの成長はうれしいのですが、独立して家を離れた後、虚無感、喪失感、孤独感にさいなまれました。夫との会話も少なくなり、子ども中心の生活だったのだと再認識。続けてきた仕事にも張りがなくなり、時には涙が止まらなくなることも。

友人から「空の巣症候群」だと言われ調べると、子育てが終わった親によくある症状とのこと。慣れれば元の生活に戻れると言われましたが、数カ月たっても変わらず。頭痛や肩凝りなど体にも不調が出始め、さらには眠れなくなったことから睡眠薬を服用するように。精神科に行くことも考えましたが、まずは婦人科へ。そこでは更年期の漢方薬を処方してもらいました。

徐々に不調が緩和された頃から、夫と相談して家庭菜園を始めることにしたのですが、これが思いのほか自分に合っていて。野菜の成長ぶりを子どもにLINEしたり、できた野菜を送ったりと、楽しみが増えました。日に当たるので健康維持につながるし、ご近所さんに声をかけられるようになりました。気がつけば、子どもロスの症状もおさまっていました。

40代女性のミッドライフ・クライシス脱却までのみちすじ

理由もなくメンタル不調に。 効果的な解決策もないまま、2年間をもんもんとして過ごす。

理由もなく後悔と閉塞感にさいなまれた30代男性

37歳の頃、特に理由もなく人生に対する後悔と閉塞感が頭を支配するように。それまでのメンタル不調は睡眠をとれば治せたのですが、今度ばかりは何をやっても効き目なしでした。

そこで頭をよぎったのが「ミッドライフ・クライシス」という言葉。でも、自分がなってみると、どうすればいいのか分かりませんでした。

それから2年ほどたち、ちょっと環境を変えてみようと社会人向けビジネススクールに入学したことで流れが変わりました。そこでは全生徒の前で自分の起業プランをプレゼンしなければならず、怖くて逃げ出したい一方、ここでコテンパンにたたかれて落ち込めば流れが変わるのではないか、というほのかな期待がありました。

そのもくろみはいい意味で裏切られました。というのも、私のつたないプレゼンを先生も生徒の皆も真摯(しんし)に聞き入ってくれて、優しく改善のアドバイスまでくれたからです。

そのスクールは2カ月ほどで終了しましたが、「今の自分で大丈夫」という自信がつき、クライシスの症状がかなり軽くなりました。

おそらく、利害関係のない第三者に自分を認めてもらえたことが、自己肯定感アップにつながったのではないでしょうか。これが、家族や仕事仲間の言葉だとそこまで心に響かなかったかもしれません。

30代男性のミッドライフ・クライシス脱却までのみちすじ

『ミッドライフ・クライシス』の著者・鎌田實先生に聞く
ミッドライフ・クライシスの原因と乗り越え方

「人生100年時代」といわれる現代だからこそ、危機を乗り越え後半人生を楽しく!

「ミッドライフ・クライシス」が注目され始めたのはいつ頃? その背景は?

1960~70年代頃から中年期に陥る心理的・身体的危機を「ミッドライフ・クライシス」と言っていましたが、今のほうが深刻化。1ドル=75円だった2011年から円安に傾き物価が上昇、09年までアメリカに次いで2位だったGDP(国内総生産)も中国、ドイツ、インドに抜かれ、現在5位まで転落しました。幸福度ランキングもG7の中で最低の55位。経済が上向きだった時に波に乗れた人は良かったかもしれませんが、その数は決して多くはありません。

さらに人生100年時代となった今、後半戦をどう生きればいいかと、将来を不安に思う人が増えたことも、ミッドライフ・クライシスが注目されるようになった要因でしょう。

「ミッドライフ・クライシス」はなぜ起きるのでしょう?

一説では40~60代の8割の人がミッドライフ・クライシスに陥ると言われています。しかも順風満帆の人生を歩んできた人も、成功にはほど遠い、失敗し続けてきた人も同じようにこの時期、危機を迎える可能性が強いのが恐ろしいところ。
例えば、会社勤めをする男性の場合、40代に入ると人生の山頂が見えてきます。そんな時、課長どまりだと自身の限界が分かると、一気に絶望感が押し寄せてきます。
女性の場合は「空の巣症候群」といって、子どもが独立した後、何をしていいのか分からなくなる人が多い。さらにホルモンのバランスが崩れる更年期障害と重なり、ミッドライフ・クライシスが起きやすくなります。

ミッドライフ・クライシスに陥りやすいタイプは?

自己決定が苦手な人が多いですね。 そもそも日本人は他人の顔色をうかがい、空気を読むのが得意。だから大企業で働いていても良い人生が送れているとは限りません。会社の決定に従わざるを得ないことも多く、自分を殺して頑張ったものの、ある時、他人軸で生きていたことに気づきます。
また、具体的な目標がなく、今やっていることは正解なのかと、自分探しが終わらない人。酒・賭け事・不倫など依存性のあるものにのめり込むといった、自分をコントロールできない人。がんなどの病気が見つかり闘病生活に入る人。特にこれまで健康だった人にとって、日常生活が送れなくなることは想像以上のストレスになります。

予防法はありますか?

若い時期に落ち込むうつと違い、ミッドライフ・クライシスは中年期に人生のつまづきから起こるもの。仕事や子育てに頑張った人ほど陥りやすい傾向にありますが、そんな謙虚で我慢強く頑張る日本人の良さを大切にしながら、ちょっとした落とし穴に落ちない生き方を目指すといいでしょう。
具体的には、依存症になりやすい、成人病にかかりやすい、更年期障害が始まるといったリスクが中年期にはあると承知した上で、できるだけ前向きに、自分を強くしていく。 昇進が望めなくても、多くの人に慕われる課長を目指すとか、考え方をちょっと変えるだけでいい。どんな状況でもあきらめず、自身をコントロールしていくことが大切です。それができないと、運はやってきません。自分に恥ずかしくないことをやり続けることで新しい芽が出てきます。
加えて、若い時から自分の人生の主人公になる心構えで、日々を過ごすといいでしょう。人に任せず、自分のやりたいことをやり抜く。そういった生活を意識するとミッドライフ・クライシスに陥りにくく、陥っても早く自分を取り戻せます。

\ 陥りやすいタイプとは /
● 自己決定することが苦手
● 自分を犠牲にして常に頑張る
● 自分探しがまだ終わらない
● 自分をコントロールできない
● 病気になり日常生活が送れない

この苦しい時期を乗り越える方法は?

スタンフォード大学の論文によると、老化の曲がり角は44歳と60歳。その角をうまく曲がるためにはできるだけ早く健康への意識を高めること。食事に気を配り、体を動かす。筋肉と人間の生き方は密接につながっていて、筋肉を動かすと人生の壁をぶち壊すチャレンジングホルモンが分泌されます。 生き方を急に変えるのは難しいですが、筋肉作りは簡単。タンパク質をとり、筋トレをすればいい。更年期障害の人も同様に、筋肉に目を向けるといいでしょう。しかも筋活すると、認知症を予防し血糖値を下げるマイオカインが分泌されます。
さらに、人に親切にすると分泌される絆ホルモン=オキシトシンも効果があります。抗酸化力があり老化を防ぐ。人の面倒を見る人は若々しく元気でいられる。落ち込んでいる時こそ人のことを考える姿勢が大切です。
歌手やタレントなどの推し活も◎。映画や舞台を見に行く、本を読む、おいしいものを食べるなど、良いこと探しで心を温める。感動すると、生きる力が湧きます。そして、社会への関心を失わないことも大切です。

\ 3つの克服法とは /
● 筋活をして体を鍛える
● 人に対して優しく接する
● 心を温める良いこと探しをする

\ 鎌田先生の /
ミッドライフ・クライシス体験談
当時、潰れそうだった病院へ赴任し、赤字から黒字経営に転換。若い医師が働きたいと全国から集まる病院に改革するなど成功を収めた鎌田先生も48歳の時、ミッドライフ・クライシスに陥った。突然パニック障害に襲われ、動悸(どうき)、息切れ、めまい、冷や汗、さらには体が震え、一人ではいられない状態に。1年ほど不眠症が続き、発作性心房細動にも悩まされた。
「自分はそれまで強い人間だと思っていました。おそらくオーバーワークからくるストレス過剰によるものだったと思います」
元の生活に戻るまで3年。その間、安定剤や睡眠薬を服用しながら心の整理を行っていった。いろんな人の声を聴き、体調を戻しながら芝居や映画、コンサートに行ったことが安定剤と同じくらいの効果があったという。
読書が救いとなり、自分も本を書きたいと作家活動を開始。さらに、これまで多くの人に助けられたことから、困った人を助けることが自分の仕事だと、2つのNPOの代表にもなった。院長を辞め、やりたいことをやるために、後継者を育てることにも力を入れた。結果的にパニック障害の中で人生のギアチェンジに見事成功、第二の人生を進むことができたと振り返る。
「人生は下り坂こそ面白いと、考えることができた。ミッドライフ・クライシスを機に、後半人生に意識を向けた人こそ強くなる。後半の人生をより豊かにするきっかけになると、気づいていただきたいですね」

今やライフワークとなったイラクの難民支援
『ミッドライフ・クライシス』(青春出版社刊)

かまた・みのる 1948年生まれ、東京都出身。医師・作家。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任、以来40年以上にわたって地域医療に携わる。現在、諏訪中央病院名誉院長。日本チェルノブイリ連帯基金顧問、JIM-NET名誉顧問などとして、被災地支援にも精力的に取り組んでいる。2006年に読売国際協力賞、11年に日本放送協会放送文化賞を受賞。『がんばらない』(集英社刊)をはじめ著書多数。

ミッドライフ・クライシスを乗り越えるもう一つのアプローチを検証
男女それぞれの更年期障害と治療法

中年期の落ち込みの原因としてもう一つ考えられるのが更年期障害。その適切な治療法と回復への近道を専門家に直撃!

関口由紀 先生

女性泌尿器科専門医 女性医療クリニックLUNAグループ理事長

関口由紀 先生

せきぐち・ゆき 1989年山形大学医学部卒業。2007年横浜市立大学大学院医学研究科修了。2009年日本大学グローバルビジネス研究科修士課程修了。医学博士・経営学修士。2005年横浜元町女性医療クリニック・LUNAを開設。2018年生殖年齢女性対象の女性医療クリニックLUNA横浜元町と更年期以降女性対象の女性医療クリニックLUNAネクストステージを開設。横浜市立大学医学部泌尿器科客員教授。

男性と女性 それぞれの更年期障害の特徴は?

女性の更年期障害はだいたい40~60歳の間に起こります。女性ホルモンの一種であるエストラジオールの低下によって、ホットフラッシュやイライラといった自律神経失調症状やめまいといった全身症状が強く出るので、比較的分かりやすいです。
一方、男性の場合は男性ホルモンの一種であるテストステロンの低下が原因。テストステロンに関しては15歳くらいをピークになだらかに減っていく人もいれば、中年期になって急激に減る人もいて、後者の場合は、更年期障害が出やすいですね。男性の場合にもうつ病に似た症状が出るのですが、一番分かりやすいのがED(勃起不全) です。朝立ちしなくなったら更年期障害の始まりを疑ったほうがいいかもしれません。

心理的なストレスが原因で更年期障害が出ることは?

あります。テストステロンは心理的ストレスに影響されやすいホルモンですので、大いに関係しています。というのも、テストステロンはかつて人間が狩猟に向かうとき戦闘意欲を高めるために出していたホルモンですので、前向きな気持ちで戦っている人や好きな仕事のために頑張っている人、現代でいえば個人事業主のような人は減りにくいといわれています。一方、収入の安定と引き換えに不本意な仕事をやらされている会社員は減りやすいといわれています。あと、PCとずっと向き合う仕事や、人間関係のストレスもテストステロンを低下させるといわれています。

更年期障害にはどのような治療法が?

当院では、女性には女性ホルモンの全身投与を行いますが、男女ともにテストステロンを補充する治療も行っています。女性に男性ホルモン(テストステロン)を補充することに抵抗を示す方もいらっしゃいますが、そもそも女性ホルモン(エストラジオール)はテストステロンから作られますし、男女問わず元気の源になるホルモンですので、笑顔で更年期障害を乗り越えるためにはどうしても必要です。
当院に勤務しているのは女性医師のみですので、男性医師に診てもらいたいという患者さんには、知り合いの泌尿器科を紹介してテストステロン補充治療を受けてもらう場合もあります。テストステロンの補充方法として、注射や塗り薬などがありますが、効き方や保険適用かどうかがそれぞれ違うので、自分のライフスタイルに合った補充法を主治医としっかり相談されるといいと思います。

女性の更年期障害も最初からテストステロン補充治療?

女性の場合、自覚症状をお聞きしてさらにエストラジオールとFSH(卵胞刺激ホルモン)の値を測り、エストラジオールの低下が症状の原因と予想される場合、まずはテストステロンではなく女性ホルモンの補充をおすすめします。しかし、乳がんがあったり、血栓症があり、動脈硬化が進んでいたりすると全身の女性ホルモンの補充はできません。
そこで漢方薬やサプリメント、抗うつ剤などを試してみて、それでも元気になれない時はフリーテストステロン(遊離テストステロン。体内で男性ホルモンとしての生物学的な働きを直接担う成分)の値を測り、テストステロンを補充します。その場合、当院ではまずはクリームタイプのもので補充します。
ちなみに、当院では次の症状のある女性にテストステロン補充をおすすめしています。

抗うつ剤を飲んでいるのに、 元気が出ない
セックスする気がしない
尿道やクリトリスの痛み
外陰痛

テストステロンを自力で増やすことは可能?

定期的に運動してしっかり筋肉をつけていれば、テストステロンが多くなる傾向にあります。あと、男性の場合は射精も大事。性的欲求がわいてきた時に、我慢せず射精する人ほどテストステロンを維持できるといわれています。
ただ、更年期障害のように急激に減った場合は、病院に行って補充治療を受けたほうがいいでしょう。注射だと1日で効き目が表れますので、1日でも早く元気を取り戻し、仕事や家事をしっかりこなすことが得策ではないでしょうか。

テストステロンで副作用は?

摂取しすぎると性格が暴力的になる、体毛が濃くなる、毛髪が抜けやすくなる、といった副作用が出るといわれていますが、病院で補充治療を受ける場合は、患者さんそれぞれの適正値を探りながら補充していくので、摂りすぎることはまずないでしょう。テストステロンは比較的副作用が出にくいホルモンですので、安心して補充していただきたいと思います。

病院でのテストステロン補充治療の費用は?

検査費用自体は、自由診療でも5千円~1万円程度です。ここに初診料や診察料が加わりますが、病院によってまちまちです。平均的には1~3万円程度とみていいでしょう。男性の場合、フリーテストステロンの値が下がっていると判断したら、多くの場合は2~4週間に1度、注射によって補充治療を行います。注射の費用は保険診療の場合、1回あたり約750円~1950円が目安となっています。

中年期に元気がなくなった場合、心理的な原因なのか 更年期障害なのか判断がつかない時は?

まずは、仕事をセーブして規則正しい生活を1カ月送ってみてください。それで回復しないなら婦人科もしくは泌尿器科にかかり、そこで更年期障害でないと判断されたら精神科・心療内科に行く。その順番だと原因を突き止めやすいと思います。

更年期障害になりやすいのはどんな人? 男女それぞれの特徴を紹介
長年更年期障害と向き合ってきた関口先生と、その師匠筋に当たる故・熊本悦明先生が突き止めた、更年期障害になりやすい人の特徴を紹介。

男性
きまじめで、辛抱強い
若い時は人一倍元気だった
職場で重要なポジションについている
休みを惜しんで仕事を優先する
モーレツ社員
転勤や単身赴任、転職、定年退職など、仕事の環境が変わった

女性
真面目で頑張り屋、神経質、完璧主義
仕事や子育て、子どもの巣立ち、 介護など、ストレス環境の中にいる
プライドが高く、人に頼ったり、相談したりするのが苦手(嫌い)
悲観主義者

\ 関口先生が理事長を務めるクリニック /
女性医療クリニックLUNA
更年期障害や性ホルモンの補充治療だけでなく、排尿やフェムゾーンのトラブル、セックスに関する悩み、お肌の悩みなど、女性ならではのさまざまな悩みに対応。

詳しくは公式HPへ
https://www.luna-clinic.jp/

男女の更年期障害やテストステロン補充治療の詳細を分かりやすく解説。さらに、運動、食事など多方面から不調を改善する方法を紹介する。『性ホルモンで乗り越える男と女の更年期  知っておきたい驚異のテストステロンパワー』 (産業編集センター)

ミッドライフ・クライシス? 更年期障害? 判断が難しい時は?
クライシスの真の原因を突き止めるには?

まずは環境を整備し、パフォーマンスの質を上げる努力をしながら様子見を。

元気がなくなったと思ったら、まずはしっかり睡眠をとり、適度な運動と精のつく食事をする。軽いうつなら1カ月以内にはよくなるはず。体調や気分が変わらなければ更年期障害を疑い、男性なら泌尿器科、女性なら婦人科に行きホルモン補充を。それでも自身のパフォーマンスに満足がいかない、うつ状態が続くようなら精神科・心療内科に行き、相談しよう。

\ 総括 /
ミッドライフ・クライシスとは——

人間は15、16歳をピークに衰えていく。生物学的には50歳前後から老化が進み、60歳くらいで死ぬのが普通。そう考えると、体力も気力も下り坂に向かう40~50代から「死」を意識するのは生物にとって当然起こりうる事象、自然の摂理といえる。それを含めてのミッドライフ・クライシスだと、関口由紀先生は語る。

「そこをうまく乗り越えれば、死を意識しないで生きている人より、意識した人のほうが豊かに生きられる。この瞬間を豊かに過ごそうと思うようになる。中年期はそういう思考の転換ができる時期。そのためにミッドライフ・クライシスはあるんじゃないかな」

うつ症状が出たり前向きになれない場合は、健康維持に重要な役割を担うテストステロンを補充するなり、体を動かすなり行動したほうがいい、と関口先生は補足する。

実際、48歳でミッドライフ・クライシスに陥った鎌田實先生も、苦しかった3年間を経てその時期を脱した時、「人生の軌道修正をする最高のチャンスだった」と振り返る。さらには「ミッドライフ・クライシスは変化に対応するための”成長痛”だった」とも。そう捉えることができれば、何も恐れることはないだろう。

心と体のバランスが崩れる
中年期危機を前向きに捉え
成熟した第二の人生を歩むきっかけに

Information
ミッドライフ・クライシスを相談できる医療団体
「ミッドライフ・クライシス」を相談できる医療機関・団体・専門家にはいくつか種類がある。心身の不調やストレス、不眠、気分の落ち込みなどを伴う場合はまず「医療機関の受診」を検討するとよいだろう。具体的には薬物療法や医学的サポートができる精神科・心療内科クリニック、精神科医など。保険適用される場合も多く、医師の診察であれば自己負担も比較的軽めになる。
医療機関だけでなく、心理カウンセラー、臨床心理士、公認心理師による心理相談・カウンセリングを受けるのもおすすめ。実際「ミッドライフ・クライシス」の相談を受け付けている機関もあり、電話やビデオ、対面など相談方法の種類も多い。カウンセリングを探す場合は「臨床心理士」「公認心理師」「キャリアコンサルタント」などの資格を持っている人を選ぶといいだろう。
会社勤めをしているなら、職場の「産業カウンセラー」「EAP制度(従業員支援プログラム)」を使えるか確認したい。仕事の悩み、ストレスを具体的に相談できるのが心強い。また、ABC Japan のような支援団体では、短期の心理サポートを無料で提供している。支援団体のホットライン、無料または低料金のサポートを探すのも一つの方法だ。

text by 岡﨑優子 大城健太郎 illustration by 鈴木勇介

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