週末婚、別居婚、事実婚から卒婚まで多様な「結婚のカタチ」が注目されている現在。
いい時代になったなあ、と独自のスタイルを貫くカップルに憧れたりもするけれどまずは自分の足元を見つめることが大事。
今あなたがモヤモヤを抱えているとしたら、その正体は?
そのことで、パートナーとちゃんと向き合えている?
そんなあなたと一緒に考えたい「結婚のナカミ」について。
脳内に「愛の翻訳機」を! 黒川伊保子
夫や恋人、あるいは上司に、「これって何の話?」「結論から言って」と言われたことはないだろうか?
女性は、これに、とても傷つく。でもね、実はこれ、大切な人の命を救おうとしているのである。つまり、愛と誠意の証(あかし)なのだ。「結論から言って」を、男性脳の神経信号の動きに照らして翻訳すると、「あなたはどんな窮地(きゅうち)にいるの? 僕は何をすればいいの?」になる。頭の中で、そう翻訳してみて。そうすれば、言うべきことが見えてくるはず。「いや、ただ話を聞いてほしいだけ。優しく共感してくれれば安心するから」──
そんなふうに言えばいいのである。命の危険がなく、問題解決の必要もないことがわかれば、けっこう優しく聞いてくれる。

ヒトがとっさに身を守るために起動する脳神経信号は、主に2種類である。「迫りくる問題をすばやく把握して反射的に動き出そうとする、脳のタテ方向(顔面に対して垂直)の信号」と「身辺に潜むわずかな違和感に繊細に気づく、脳のヨコ方向(顔面に対して水平)の信号」だ。
たとえば、荒野を行くとき。ふと何かの気配を感じて周囲を確認する、そんな瞬間。タテ型回路を起動した人は、目の前に広がる空間の中から「今注目すべき一点」をすばやく確定して、目標物への距離感をつかみ、動いているものならそのスピードとベクトル(動きの方向)も瞬時につかむ。そして、ほぼ同時に、反射的に身体を動かしもする。同じ場面で横型回路を起動した人は、半径数メートルの身の周りをつぶさに感じ取る。針の先ほどの違和感も見逃さないし、皮膚感も使って空気の揺らぎさえ逃さない。他者の息使いの乱れから、嘘や敵意まで見抜くのである。
対話においてもタテ型は、話の結論という一点に意識をフォーカスすることになる。話を皆まで聞かずに「要するに」とまとめ、アドバイスを速攻で打ち出す。一方、満遍(まんべん)なく感じとるヨコ型は、話の筋のみならず、相手の心情を慮(おもんぱか)りながら話を聞いていく。それだけじゃない、「そういえば、あのとき」「そういえば、あの人」「そういえば、あの書類」のように過去の経緯にまで思いを馳(は)せる。
男女は、この二つの回路を分け合って使う。男性の多くがタテ型を、女性の多くがヨコ型を、通常の基本の優先側にしている。
タテ型回路は、何万年もかけて狩りのシーンで進化してきた回路だ。危険な現場で、命を守るために使われる信号なので、とにかく結論を急がずにはいられない。特に大切な人に対しては。そうとわかれば、男たちの素っ気ないことばを許してあげられるのでは? いっそ、優しい愛のことばに変換してあげようよ。
先日、私がオムレツを作ったときのことである。
ひき肉と何種類もの野菜を刻んで炒め、卵で包む黒川家のオムレツは、黒川の母に教わったもの。以来30数年、幾度となく作ってきたのだが、その日のそれは肉厚のシイタケがいい仕事をしてくれて、ことさらご飯に合う味に仕上がっていた。私が思わず「美味(おい)しいね」と声を上げると、夫がすかさず「どこが?」と言う。
「なにそれ!?」と声を荒らげたのは、およめちゃんである。「なに言ってるの。すごく美味しいじゃん」と言う彼女に、夫は「え? そっちこそ、なに言ってんの? 美味しくないなんて言ってない」と返した。
私は苦笑いしながら、およめちゃんに「私が翻訳するね。この人の『どこが?』は『いつもとっても美味しいのに、今日だけことさらそう言うなんて、どこが違うと思ったの?』という意味なのよ」と説明してあげた。夫は、「そうそう」とうなずいて、他にどんな意味があるの?という顔をしている。「あなたにも言っとくね。普通、『どこが?』だけ言ったら、『これのどこが美味しいんだ? いや、ぜんぜん美味しくない』という意味なの。国語で反語表現って、教わらなかった?」
それを聞いた夫は、「世の中は、ずいぶん、ひねくれてるんだな」ときょとんとしている。
私の脳の中のラブ・インタプリタ(愛の翻訳機)は、かなり高性能なのだが、この人がそれに気づいてありがたく思う日は来そうにもない(苦笑)。

黒川 伊保子
くろかわ・いほこ (株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて14年にわたり人工知能の研究開発に従事した後、コンサル、研究所等を経て、2003年、(株)感性リサーチを設立。04年には脳機能論とAIの集大成による語感分析法を発表、感性分析の第一人者となる。著書に、『夫婦脳』などの脳科学本、18年にベストセラーとなった『妻のトリセツ』や、続く『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ』(講談社+α新書)など多数。

わたしたちは
見えているものがズレている
– 視点のズレからくるコミュニケーション不全の問題 –
夫婦の問題について夫と妻が一緒にカウンセリングを受ける。
洋画などでは見慣れたこの「夫婦カウンセリング」が、日本でも注目されるようになってきた。
そこでここからは、約3000組もの夫婦カウンセリング実績のある安東秀海・安東美紀子両先生によるアドバイスを。
まずは、双方の話を同時に聞くからこそよく見えてくる、「視点のズレ」の問題から。
