結婚生活の中の「すれちがい」がこじれる前に もういちどパートナーと向き合う。のヘッダー

週末婚、別居婚、事実婚から卒婚まで多様な「結婚のカタチ」が注目されている現在。
いい時代になったなあ、と独自のスタイルを貫くカップルに憧れたりもするけれどまずは自分の足元を見つめることが大事。
今あなたがモヤモヤを抱えているとしたら、その正体は?
そのことで、パートナーとちゃんと向き合えている?
そんなあなたと一緒に考えたい「結婚のナカミ」について。


脳内に「愛の翻訳機」を! 黒川伊保子

夫や恋人、あるいは上司に、「これって何の話?」「結論から言って」と言われたことはないだろうか?

女性は、これに、とても傷つく。でもね、実はこれ、大切な人の命を救おうとしているのである。つまり、愛と誠意の証(あかし)なのだ。「結論から言って」を、男性脳の神経信号の動きに照らして翻訳すると、「あなたはどんな窮地(きゅうち)にいるの? 僕は何をすればいいの?」になる。頭の中で、そう翻訳してみて。そうすれば、言うべきことが見えてくるはず。「いや、ただ話を聞いてほしいだけ。優しく共感してくれれば安心するから」──

そんなふうに言えばいいのである。命の危険がなく、問題解決の必要もないことがわかれば、けっこう優しく聞いてくれる。

ヒトがとっさに身を守るために起動する脳神経信号は、主に2種類である。「迫りくる問題をすばやく把握して反射的に動き出そうとする、脳のタテ方向(顔面に対して垂直)の信号」と「身辺に潜むわずかな違和感に繊細に気づく、脳のヨコ方向(顔面に対して水平)の信号」だ。

たとえば、荒野を行くとき。ふと何かの気配を感じて周囲を確認する、そんな瞬間。タテ型回路を起動した人は、目の前に広がる空間の中から「今注目すべき一点」をすばやく確定して、目標物への距離感をつかみ、動いているものならそのスピードとベクトル(動きの方向)も瞬時につかむ。そして、ほぼ同時に、反射的に身体を動かしもする。同じ場面で横型回路を起動した人は、半径数メートルの身の周りをつぶさに感じ取る。針の先ほどの違和感も見逃さないし、皮膚感も使って空気の揺らぎさえ逃さない。他者の息使いの乱れから、嘘や敵意まで見抜くのである。

対話においてもタテ型は、話の結論という一点に意識をフォーカスすることになる。話を皆まで聞かずに「要するに」とまとめ、アドバイスを速攻で打ち出す。一方、満遍(まんべん)なく感じとるヨコ型は、話の筋のみならず、相手の心情を慮(おもんぱか)りながら話を聞いていく。それだけじゃない、「そういえば、あのとき」「そういえば、あの人」「そういえば、あの書類」のように過去の経緯にまで思いを馳(は)せる。
男女は、この二つの回路を分け合って使う。男性の多くがタテ型を、女性の多くがヨコ型を、通常の基本の優先側にしている。

タテ型回路は、何万年もかけて狩りのシーンで進化してきた回路だ。危険な現場で、命を守るために使われる信号なので、とにかく結論を急がずにはいられない。特に大切な人に対しては。そうとわかれば、男たちの素っ気ないことばを許してあげられるのでは? いっそ、優しい愛のことばに変換してあげようよ。

先日、私がオムレツを作ったときのことである。
ひき肉と何種類もの野菜を刻んで炒め、卵で包む黒川家のオムレツは、黒川の母に教わったもの。以来30数年、幾度となく作ってきたのだが、その日のそれは肉厚のシイタケがいい仕事をしてくれて、ことさらご飯に合う味に仕上がっていた。私が思わず「美味(おい)しいね」と声を上げると、夫がすかさず「どこが?」と言う。
「なにそれ!?」と声を荒らげたのは、およめちゃんである。「なに言ってるの。すごく美味しいじゃん」と言う彼女に、夫は「え? そっちこそ、なに言ってんの? 美味しくないなんて言ってない」と返した。

私は苦笑いしながら、およめちゃんに「私が翻訳するね。この人の『どこが?』は『いつもとっても美味しいのに、今日だけことさらそう言うなんて、どこが違うと思ったの?』という意味なのよ」と説明してあげた。夫は、「そうそう」とうなずいて、他にどんな意味があるの?という顔をしている。「あなたにも言っとくね。普通、『どこが?』だけ言ったら、『これのどこが美味しいんだ? いや、ぜんぜん美味しくない』という意味なの。国語で反語表現って、教わらなかった?」
それを聞いた夫は、「世の中は、ずいぶん、ひねくれてるんだな」ときょとんとしている。

私の脳の中のラブ・インタプリタ(愛の翻訳機)は、かなり高性能なのだが、この人がそれに気づいてありがたく思う日は来そうにもない(苦笑)。

黒川 伊保子

黒川 伊保子

くろかわ・いほこ (株)富士通ソーシアルサイエンスラボラトリにて14年にわたり人工知能の研究開発に従事した後、コンサル、研究所等を経て、2003年、(株)感性リサーチを設立。04年には脳機能論とAIの集大成による語感分析法を発表、感性分析の第一人者となる。著書に、『夫婦脳』などの脳科学本、18年にベストセラーとなった『妻のトリセツ』や、続く『夫のトリセツ』『夫婦のトリセツ』(講談社+α新書)など多数。

わたしたちは
見えているものがズレている
– 視点のズレからくるコミュニケーション不全の問題 –

夫婦の問題について夫と妻が一緒にカウンセリングを受ける。
洋画などでは見慣れたこの「夫婦カウンセリング」が、日本でも注目されるようになってきた。
そこでここからは、約3000組もの夫婦カウンセリング実績のある安東秀海・安東美紀子両先生によるアドバイスを。
まずは、双方の話を同時に聞くからこそよく見えてくる、「視点のズレ」の問題から。

夫には理由不明のまま妻の不機嫌は常態化する

安東両先生への相談内容で多いのは「不仲」「不貞」の2つ。ただ、主訴(クライアントの主要な訴え)が何であってもさまざまな要因が複合的に絡み合っているため、ケースごとに注意深くその根本にあるものを探っていく必要がある。そうして見えてくるのは、多くの場合、男性・女性の違いからくる「価値観や視点、コミュニケーションのズレ」だという。

「不仲の場合、子育て中の夫婦ですと"家事・育児の分担"への不平不満が圧倒的に多いのですが、例えば『あなたは飲み会を普通に入れるけど、私が参加しようと思ったら、まずはあなたに許可を取ってシッターさんに予約して──とすごくたいへん』など、夫には見えていないことがとても多い。もちろん男性は30〜40代ぐらいですと仕事で急に呼び出されるようなこともあるでしょうが、それを"当たり前"の感覚でいるとどんどん溝が深まっていく。そして妻の不機嫌は常態化し、夫は理由がよくわからないまま地雷を踏むのを避けて黙ってしまう。そうしたことが積もり積もってコミュニケーションのズレが進んでしまうのです」(美紀子先生)

特にまず男性は「リトル”自分”」に聞く!

コミュニケーションのズレの解消のために必要なこと。それはなによりも「お互いにきちんと伝え合うこと」につきるのだが、その場合、さらに必要なのは「特に男性の場合は相手の不満などをまず"聞く"こと」(秀海先生)。しかしこちらも不満を抱えた状態で聞くのは、それはそれで、やはりしんどい。

「そんなときはどうすればいいですか? とよく男性陣に聞かれるのですが、1回セルフトークをしましょうと伝えています。
男性の多くは、自分の気持ちを言語化することが苦手です。苦手以前によくわかっていないことも多いので、自分はどんな気持ちなのか、何を不満に思っているのかということに、ちゃんと目を向けてあげることが必要なのです。以前、サッカー選手の本田圭佑(ほんだけいすけ)さんが、自分の内なる声に耳を傾けることを、『リトル本田に聞いてみた』と表現していましたが、これ、男性陣には理解しやすいようなんです。だからなのか、妻に気持ちを伝えるのはハードルが高くても、そうやって、自分の気持ちに耳を傾けることは、心にたまった不満を消化するうえでとても効果的なんです」(秀海先生)

改善度が高い神経発達症に関わる事例

現在、コミュニケーション不全に関する今日的なトピックとして無視できないのが神経発達症(発達障害)の問題。
「明らかな診断がつくものかどうかは置いておくとして、神経発達のカテゴリー的にかなりグレーな特性がある方は優秀な方も多く、深く付き合っていかないと気づかないことも多いんです。ただ、相手の感情を読めなかったり衝動性が強くて不適切なことをバッと言ってしまうなど、定型発達の方とはリズムが違うと思ったとき、特性を理解した上でのコミュニケーション改善という形で介入する例は多くあります」(美紀子先生)

相手とはいつも認識がズレている、こちらの気持ちがまったく伝わらないなど悩んでいたことが特性によるものとわかれば、こちらの対応も変えることができるはず。
「そうなんです。実際、取り返しのつかないほどの状態になっていなければ、特性の理解と対策でかなり改善していける事例ではありますね」(美紀子先生)

安東先生・カウンセリング事例❶

「視点のズレ」を認識・理解する。
夫/40代前半・会社員
妻/30代後半・パートタイム
子/未就学児2人
※カウンセリング開始時の年齢です

〈相談内容〉
家事・育児の分担についての不平不満。妻「家事・育児はほぼわたしだけ」夫「めちゃくちゃ手伝っています」といった行きちがいから不仲に。

〈カウンセリングのアプローチ〉
行きちがいの根本を探っていくと、「分担の比率」に関する感覚がそもそも違うことがわかりました。夫の方は、仕事以外で自分の空いている時間はほぼ家事・育児に使っているという「自分の時間配分の中の比率」。ですから当然、自分は十分やっていると感じている。一方の妻は「家事・育児の全体量からの比率」なので、私8割/夫2割という認識になる。従って「それぞれの視点がズレている」ことを理解するため、分担している内容を書き出すなどしながら整理をしていったのですが、このように可視化していくことで解決につながるケースも少なくありません。(秀海先生)

〈美紀子先生からもアドバイス〉
家事・育児の分担に関する相談は本当に多いのですが、可視化といっても単純に作業を書き出せば見えてくるわけでもないのが難しいところ。例えば「発熱」で保育園にお迎えに行かなければならないとき「私が行くのは当たり前になっているけど、夫が行く場合にはあまり当たり前感がない」など、微妙な不公平感を妻は多々感じています。そういった細かな部分や「名もなき家事」を含めて視線・認識のズレを理解していくことが大切です。

わたしたちもモヤモヤしている! 「夫婦のすれちがい」アンケート ①
夫/30代前半・会社員
妻/30代半ば・会社員(この方に聞きました)
子/8カ月1人

Q1:あなたが感じている夫婦間のモヤモヤは?
A:毎朝、夜中に夫が使ったままのもの(食器やティッシュなど)を片付けるときや、自分の支度だけ整えて子どもの準備もしている私を急かしたり、お風呂に入れずに子どもの寝かしつけを完了していたときにモヤモヤする。あと、車が欲しい夫と口論になるときも。出かける頻度、駐車場や維持費を考えたらレンタカーで十分。男のロマンは本当に無駄!

Q2:そのモヤモヤについて話し合ったことはありますか?
A:普段の会話の中で冗談ぽく伝えたり、ケンカの際に伝えたりしているが、ほぼ変化なし。夫が私にイヤなことがあったときに「◯◯ちゃん、お願いがあるの〜」と伝えてくるため同様の形も試してみたが効果なし。何度伝えてもイヤなことを変えてくれない。

Q3:パートナーとの理想の関係や状態を教えてください
A:毎日すすんで家事や育児を!夫は自分のタイミングでばかり行動するので、もっと周りを気遣って行動してほしいし、子どもの見本となるように身の回りの片付けをしてほしい。

Q4:その他、夫婦関係で悩んでいることがあれば教えてください
A:子どもが生まれて、お家の場所や広さについても夫と意見がわかれています!

すれちがい回避の必須ポイント
「家事分担は"リーダー制"に! そして、リーダーには文句を言わず、リスペクトすること」(黒川先生)

\ 黒川先生にもお聞きしました! /

夫は妻に家事をさせているわけじゃない。6割以上の家事が「見えていない」だけ!

例えば、妻は「トイレに行くついでにこれを片付けよう」とか考えるでしょう? でも男性脳は狩り仕様で、獲物(トイレ)しか目に入らない。実は家事って、そういう「ついで」が6割以上を占めるんだけど、夫には「見えていない」んです。

その対策として、役割分担を明確にすること。しかも一つのタスクを丸投げにする縦割りで。たとえば、洗濯リーダーに任命する。係じゃなくてリーダー。リーダーは結果の責任は持つけど、ときには作業を他の家族に分担してもいいんです。けど、結果責任があるから、結果にこだわる男性脳は、洗剤や干し方まで真剣に追求して、結局なんでも自分でやることに(微笑)。こちらが手伝ったときは、お礼を言ってくれるし、最高ですよ。

わたしたちは
ちゃんと言葉を交わせていない
-「言葉」にしない、伝えないことがすべての根本原因に –

特に大きな問題を抱えていなくても、忙しい日々の中、深いところまではなかなか言葉にして相手に伝えることをしないのが夫婦というもの。
しかしその状態が「普通のこと」になってしまうと、想像もしなかったところまで事態が悪化してしまうことも……。
そうならないためには、とにかく「言葉を交わす」こと。その際に気をつけるべきことを聞いてみた。

15分でもいい 夫は妻の気持ちを聞いて

実は妻側は、けっこう「言葉」にしているもの。ただそれも聞いてもらえなければ無も同然。「男性は、耳が痛くても毎日15分でもいいので、妻の気持ちを聞いてあげておいた方がいい。そこで大切なのは、決してその段階で問題を解決しようとしないこと。『つらかったんだね、しんどかったんだね』と気持ちに寄り添ってあげられると、少しずつ状況がよくなっていくはずですから」(美紀子先生)

「多くの男性は、そもそも会話に重きを置いていない傾向があって、『言われなくてもわかるだろう』と考えるところがあるので、これが非常に難しい。なので、先ほども言いましたが、男性はまず自分の声を聞いて、どうしたいのか、何をしてほしいのかを言語化していくことが必要です。そうすることで、妻にも自分の気持ちを伝えることができるようになるはずですから」(秀海先生)

自分の機嫌は自分でとって相手を遠ざけない

男性がなかなか自分の気持ちを伝えられないのは、妻の「不機嫌モード」が定着した状況に陥っている夫婦が多いからかもしれない。
「まずはお互いに、自分の機嫌は自分でとることが大切です。イライラして不機嫌な状態が長引くと、やはり相手はつらいもの。なかなか近づけず、"話もできないし、手に負えないな……"となってしまいます」(秀海先生)

しかし、問題が解決していないのにどうやって自分の機嫌をとったらよいのか? これに対しては、黒川先生が「感じたことを口にしてみる」ことの効用を、以下のように説いている。
「モヤモヤ、イライラする原因の一つに、勘が働いていないことがあげられます。脳を活性化するために、感じたことを言葉にする癖をつけることをオススメします。スイーツを食べて『まったり』と言ってみる。窓から入ってきた風の気持ちよさを言葉にしてみる。独り言でも効果がありますが、共感してくれる人がいれば最高。感じたことを言葉にするとき、右脳と左脳が連携し、勘がよくなります。作業がいつもよりはかどるし、好奇心の信号も働きやすくなるので、モヤモヤしてる暇がなくなります。男性も一緒です」(黒川先生)

批判はNG、不満はOK「話す」は「聞く」の半分で

「これは多くのご夫婦に適用できると思うんですが、"とにかく批判はやめましょう"。肯定的なコミュニケーションを取れればいちばんいいんですが、どうしても肯定的になれないときでも、少なくとも批判はしない。その代わりに不満は言ってもいいです。しかし実態は、多くの場合、女性は不満も言うし、批判もする。一方、男性は批判をしない代わりに不満も言わない。すると、女性側としては"夫は何を考えているかわからない、本音が見えない"となる。それに対して男性側は"自分は何も言わないようにしているのに言われてばかり……"という感覚になってしまうのです。

この話を批判も不満も言えない男性にすると、話そうと頑張ってしまうのですが、男性はいったん話し出すと相手の話を聞かなくなる傾向が強いので、一人でしゃべって、しかも長くなる。そういう方には、まずはとにかく相手の話を聞いて、『あなたの意見は?』と言われることがあっても、"話す"は"聞く"の半分にとどめておいて。いえ、3分の1でもいいくらいです(笑)」(秀海先生)

安東先生・カウンセリング事例❷

「ありがとう」の言葉さえあれば
夫/ 40代前半・会社員
妻/ 30代後半・パート
子/ 5歳児1人、0歳児1人
※カウンセリング開始時の年齢です

〈相談内容〉
家事・育児に関する話し合いを重ねてもなかなか解決せず、妻の不機嫌が定着。そんな妻に夫は話しかけることも近づくこともできない膠着(こうちゃく)状態で相談を。

〈カウンセリングのアプローチ〉
家事などの分担について「もうこれ以上はできない」(夫)といった相談でしたが、妻の話を聞いていくと、分担うんぬんではなく、負担の大きい妻に感謝の意を伝えているかどうかの問題だとわかってきました。「僕としてはもちろん感謝しているけど、妻がいつも不機嫌で近づけないから言えなくて」といった本音を言葉にしていくうちに、互いに感情がほどけていき、「ありがとうって言ってほしいということは、僕を嫌いなわけじゃなかったんだね」という言葉に妻が涙を見せる場面も。その後、夜に2人でお酒を飲む時間を作るなど、関係は少しずつ改善しはじめています。(美紀子先生)

〈美紀子先生からもアドバイス〉
子どもができると、多くの場合、夫は生活を安定させることでの貢献に軸が移りますが、妻はダイレクトに「子どもの命を預かる」といった感覚になる。こうした「命に対する重み」の感覚の違いから、分担作業だけしていては見えないもの(興味の示し方、心の寄せ方など)について、夫はなかなかピンとこないんです。そんな違いを理解した上で、妻の「ガッカリ」が積み重なっていく前に、気持ちをちゃんと伝え合うことが大事です。

わたしたちもモヤモヤしている! 「夫婦のすれちがい」アンケート ②
夫/60代・会社員
妻/50代・パート(この方に聞きました)
子/17歳1人

Q1:あなたが感じている夫婦間のモヤモヤは?
A:
夫は自分の好きなものを食べたいから、スーパーで惣菜を買って帰るのが日課。作っても食べないので、平日は子どもと2人ですませている。朝、容器が流し台に置かれているのを片付けるのが、ものすごく嫌でモヤモヤする。

Q2:そのモヤモヤについて話し合ったことはありますか?
A:
いいえ。諦めている。夫には私の声は聞こえない。口論になったらかなわない。

Q3:パートナーとの理想の関係や状態を教えてください
A:
お互い相手を思いやる気持ちがストレートに届く関係。

Q4:その他、夫婦関係で悩んでいることがあれば教えてください
A:
夫は残業と出張が多く、子どもが2歳までは単身赴任だったので、ワンオペが当たり前。保育園はご近所とのつながりで乗り切れたが、小学生になると難しくなり、会社を辞めてパートに切り替えることに。扶養に入り生活費を現金で渡されるようになったことで、対等ではなくなったように感じる。私のキャリアが終わるのに助けてくれなかったこと、夫へのうらみつらみが積もっていて、普段は見ないようにしているが、苦しい。

すれちがい回避の必須ポイント
「とにかく"聞く"こと。そして気持ちに寄り添って」(美紀子先生)
「特に男性は"何かを言おう"と絶対考えない」(秀海先生)

安東先生・カウンセリング事例❸

言葉にしないことで招く冷戦状態
夫/50代前半・会社員
妻/40代半ば・パートタイム
子/未就学児2人
※カウンセリング開始時の年齢です

〈相談内容〉
口論の末に妻が刃物を持ち出し相談時には別居・離婚調停中。子どものためにもできることなら再構築をという双方の意思によりカウンセリング。

〈カウンセリングのアプローチ〉
小さな不満が積み重なる中、強めの言い方をされたことなどで冷戦状態に。ただ、子どものことでやり取りしないわけにいかず、なんとなく通常生活に戻るうちに、何が問題かよくわからなくなる。でも根本問題は解決していないのでモヤモヤはつのり、気づけばほぼ会話のない状態で1年――といったケースも少なくないのです。

〈美紀子先生からもアドバイス〉
まずは「刃物を向けた側も傷ついているんです」とお話ししてプロセスをたどっていくと、その背景には「産後クライシス」がありました。産後に寄り添ってもらえなかった経験から「夫=敵」となり、もはや妻にとってはスキンシップも性被害的な感覚に。このケースでは、根本原因を理解できたことで婚姻継続となりましたが、刃物を向けられての傷つきも根深いので、継続して夫をケアしていくことも忘れてはならないことです。(秀海先生)

わたしたちは
愛し合えているのだろうか?
-「もう愛していないの?」から不貞、レス問題まで –

出会ったときの互いの気持ちが、そのまま未来永劫続くわけなどないことはわかっていても、多くの女性が(男性も?)気にする「まだ愛されているか問題」。そんな、もう私に関心がないの? という不安・不満から不貞、セックスレスの問題までを考えていく中で、黒川先生による「夫婦の愛」についてのとてもステキな言葉にも注目を!

「顔を見ても腹が立つ!」 不貞問題の癒やし方

まずは、相談件数も多いという「不貞」問題から。
「相談に来られたご夫婦に、では数年前にはどうだったかと尋ねると、やはり最初はコミュニケーション不足や家事に協力してくれなかったといったところから、それが始まっていることが多いですね」(美紀子先生)

「不貞の場合、どちらかの、あるいは両方の心が傷ついているので、そこをまずケアしましょうねというところから入ります。不貞によって著しく不仲になっているときには、顔を見ても腹が立つ、隣に座っているだけで吐き気がするみたいなこともあるわけで、その感情的なところも含めて癒やすアプローチを行っていきます」(秀海先生)

そんな状態の2人を、では、どう癒やしていくのだろう。「まず、不貞をした側が内省して、しっかり相手と向き合っているか、要は逃げていないかということが大きな癒やしのポイントになります。あともうひとつ、された側に関してのアプローチも重要になってくるんです」(美紀子先生)

自分を愛し直す 心のセラピーを

「例えば夫に不倫をされた妻は、決してそうじゃない場合の方が多いのですが、"夫に愛されていない私"という意識になってしまいやすいものです。そして、愛されていない私のことは自分でも愛せなくなってしまう。そんなときには、夫からどう思われているかも大事だけれど、それはいったん横に置いて、"自分を愛し直す心のセラピー"を行っていきます。傷ついた私をもう1回見つめ直して、本当に傷つく必要ありますか? 夫の不倫は彼の問題ですよね。じゃあ責任を向こうに押しやっちゃいましょう―といった形で」(秀海先生)

それは妻に不貞された夫の場合でも? と考えて、ふと思った。夫と妻では、やはり圧倒的に夫の不貞の方が多いのだろうか。
「それが、10年前は完全にされた妻からのご相談が多かったんですが、今は半々ぐらいなんです。ご来談者のケースに限ったデータですが、アプリの登場もハードルを下げている要因ではないかと思っています」(美紀子先生)

愛しているからこそ悩む「愛されていない?」問題

次に「愛はもう消えたのか?」問題だが、これは誰しもの悩みであることを、美紀子先生は教えてくれた。
「男性は、家には気持ちを向けていないように見えるかもしれないけれど、仕事に打ち込むことは全部家族のためだと考える方がいまだに多く、一方女性は、仕事仕事で私(や子ども)に興味がないからもう愛していないんでしょというケースが、これまた多いんですね。この"愛されている、愛されていない問題"に関しては、それぞれのお気持ちをしっかり聞いていくと、結局は互いに愛情があるからこその悩みだとわかってくるんですよ」(美紀子先生)

確かに、愛が本当になければ、悩むことすらないだろう。では、セックスレスに関しては?
「のぼせ愛のような恋愛感情って3年で冷めるというのはデータにもあるところなので、レスでもその先の家族の形としてお互いにある程度折り合いがついていけば、それが幸せな夫婦関係だなとは思うんです。一方、セックスに関する価値観が違う場合は、そこできちんと話し合えるかどうかが重要なポイント。話すかもんもんとしたまま悩むかで、道が随分違ってきます」(美紀子先生)

安東先生・カウンセリング事例❹

セックスレスの根本原因を知る
夫/30代半ば・会社員
妻/30代半ば・主婦
子/3歳1人
※カウンセリング開始時の年齢です

〈相談内容〉
妻がセックスを拒絶。スキンシップばかりか隣に座ることも嫌がられる夫が何が悪いのかわからず相談。

〈カウンセリングのアプローチ〉
主訴はセックスレスですが、拒否している側の妻に聞いていくと、夫が子どもに対しても時々キレることが根本の原因でした。その場合、やはり夫側の問題が大きいので、なぜキレるのかについて背景を分解して見直していくと、その頻度が減少。それに従って2人の関わり方もマイルドになっていき、まずは隣に座るのはOK、肩に触れるのも次第にOKに。そうして関係性そのものがベースアップしていく中で、主訴であるレスの問題に入っていきます。今回のレス状態は、夫婦間の信頼という土台が崩れているから起きていました。土台が安定することで回復していくことができたケースです。(秀海先生)

〈美紀子先生からもアドバイス〉
土台となるものが改善していくと、まだレスではあるものの、それぞれに「2人はまあまあ仲よくやっている」といった実感が戻ってくる。その状態で時間を過ごしていってもらうと、妻側のセックスに対するネガティブな意識も徐々に変わっていきます。実際、このご夫婦には、4年ほどかかりましたが第2子が誕生しました。報告を受けたときは本当にうれしかったのですが、実はこのパターン、事例としてはそう珍しくはないんですよ。

わたしたちもモヤモヤしている! 「夫婦のすれちがい」アンケート ③
夫/40代半ば・会社員
妻/40代前半・主婦(この方に聞きました)
子/2歳1人、1歳1人

Q1:あなたが感じている夫婦間のモヤモヤは?
A:
普段は穏やかで家事も仕事もバリバリ、文句なんかない夫ですが、たまにキレる。怖いので、何も言えなくなる。

Q2:そのモヤモヤについて話し合ったことはありますか?
A:
結婚して4年目になり、少しずつ対応がわかってきた。先日、初めて私がキレ返したら夫はびっくりして冷静になっていた。

Q3:パートナーとの理想の関係や状態を教えてください
A:
今のままでいたい。けれど私は離婚を経験しているので、離婚の後遺症?か、「別れても大丈夫なようにしておかないと」と、考えてしまう。心の余裕がないと、相手のことを思いやるのを忘れるので、あまり忙しくしないようにしている。結婚生活を続けるには余裕が大事!

Q4:その他、夫婦関係で悩んでいることがあれば教えてください
A:
今の夫のありがたさが身にしみる。文句など言えばバチがあたる!と思っているのに、足音が大きいとか食器を自分で片付けてくれないとか、ちょっとしたことでイラッと。あと、2人目を産んでからは、"そういうこと"がないのが気になっています。私の性欲はどこへいってしまったのか……。

すれちがい回避の必須ポイント
「昔みたいな"愛"はなくなっても、その思いは"慕情"となって残ります」(黒川先生)

\ 黒川先生にもお聞きしました! /

妻はもはや自分の体の一部だからいろいろしてくれなくなるだけ

昔みたいに愛されたい? 恋愛中の、あの切ないほど相手が気になった感覚は、脳の生殖本能、つまり「発情」のなせるわざ。年を重ねて生殖本能が薄れてきたらなくなるのが当たり前。男性は、長く一緒にいる妻を体の一部のように感じています。自分の心臓に「ありがとう」とは言わないように、いろいろしてくれなくなるだけ。でも、妻に先立たれたら、あっけなく死んだりします。その気持ちをことばにするなら「慕情」。哺乳類(ほにゅうるい)のオスは、自分の遺伝子を生み育ててくれるメスを幸せにするのが生殖本能の一部(自分の子どもを無事育て上げるため)。その思いは慕情となって歳を取っても残ります。要は、妻を幸せにする方法を知らないだけ。何をしてほしいのか、ことばにして伝えましょう。

わたしたちが
絶対に「NO」と言うべきこと
– DVなどのきっかけを見逃さないために –

ここまで、互いに真摯(しんし)に向き合い直すことや適切なカウンセリングの介入などがあれば改善の余地がある問題について触れてきたが、すでにその域を越えた問題を抱えている夫婦も少なくない。
そんな事例についてのアドバイスとともに、夫婦関係のモヤモヤを高じさせないために覚えておきたい「絶対必須条件」を安東両先生にあげてもらった。

エスカレートする前に「きっかけ」に気づく

「確かにDVなどヘビーな案件は、そうした専門家やシェルターなどに連絡することが急務なので、比較的、私たちへの相談ということでは少ないのですが、そのような方向に行くきっかけとなりそうな、例えばもめ事が深まっていくに従ってモノに当たりはじめたとか、ちょっと体を押したみたいなことには慎重になります。不貞の後などには特に。

例えば、妻側が不貞していたことで夫の手が出たというケースでいえば、妻には罪の意識があるので、"私が悪いんだから仕方ない"と受け入れるケースが多いんですが、いちど受け入れはじめてしまったら、それはずっと続きます。手が出た時点で絶対"NO"。『だったらもう離れる、別れる』と言えない限り、それは必ずエスカレートしていきますから」(美紀子先生)

ただ「聞く」、ただ「寄り添う」にも十分意味がある

最後に、「もういちど向き合う」ために大切なことを、改めてまとめてもらった。
「不満も『ありがとう』も、言葉に出して表現する。長年一緒にいるからツーカーだと思っていても、意外と伝わっていないものだから。そして、やっぱり相手の言葉にも耳を傾けて、きちんと気持ちに寄り添おうとすることですね」(美紀子先生)

「でもそれって、実は男性には何のことかよくわからないと思うんです。具体的には何をすればいいですか? と(笑)。そんな男性たちに伝えるとすれば、話は聞く、ただ聞く、それに対して次に何を言おうか考えないで聞きましょうと。"寄り添う"も、とりあえずただ寄り添う。それじゃ何もしていないと一緒だと思うことでも、十分に意味がありますから」(秀海先生)

わたしたちもモヤモヤしている! 「夫婦のすれちがい」アンケート④
夫/40代半ば・会社員(この方に聞きました)
妻/40代半ば・主婦・パート
子/23歳1人

Q1:あなたが感じている夫婦間のモヤモヤは?
A:
今は解決。以前は実家との付き合い方。

Q2:そのモヤモヤについて話し合ったことはありますか?
A:
話し合っても解決しないため強行策をとることに。それぞれで自己解決。お互いをとって実家を切るパターン。どちらかといえば私の方が切ったか。

Q3:パートナーとの理想の関係や状態を教えてください
A:
本当は皆でワイワイが理想であったが、そんなものは理想でしかないことを、大人になればなるほど理解できるようになった。実家との関係より現家族との生活を優先するのが私の考え。妻が同じ考えかはわからないが間違えていないはず。現在進行形なので。

Q4:その他、夫婦関係で悩んでいることがあれば教えてください
A:
特になし。基本的に離婚しようと思ったことはありません。なぜなら、お互いを尊重、信頼して生きているためです。外で遊ぼうが、誰と寝ようがかまいません。最終的に家に戻ってきて生活が成り立っていれば文句はありません。家を買って子どもを教育して嫁がせたことで私のヒトとしての任務は終了。あとは次の世代の誕生を見届ければよし。

\ 秀海先生・美紀子先生にも聞きました! /

深刻な喧嘩(けんか)のときは互いのせいにしつつ深めていく
夫/50代・カウンセラー
妻/40代・カウンセラー(この方に聞きました)
子/小学生2人、未就学児1人

Q:カウンセラー同士でも衝突することはありますか?
A:
仲はよいのですが、第2子が生まれて「手が足りない!」となってからは小さな衝突の頻度は多めです(笑)。

Q:ご自分たちの問題はどのように解決するのでしょう?
A:
私が怒って夫がすねるか引きこもるかになるんですが、重いテーマのときには互いの生い立ちを引っ張り出すなどしながら深くえぐり、向き合いすぎるぐらい向き合います。

Q:現在、夫婦関係に不満はありますか?
A:
散々向き合ってきたので今はあまりありませんが、深刻な喧嘩のときは、それぞれ相手の問題だなと、お互いのせいにしつつも対話を深めていく。クライアントからの学びがなければ今はないと思っています。

安東 秀海/安東 美紀子

安東 秀海/安東 美紀子

あんどう・ひでみ 心理カウンセラー養成スクールの講師を経て2015年に独立、夫婦関係を専門とするカウンセリングオフィスLifeDesignLaboを開設。心理カウンセラーとして10年以上臨床に携わった経験から多彩なアプローチ手法を持ち、心理療法や心理ワークにも精通。著書に『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法(日本ビジネスプレス)』がある。

あんどう・みきこ 大手カウンセリング事務所にて所属カウンセラーとして活動後、夫と共に独立。不倫などの問題を越えての夫婦関係の構築やセックスレス、モラハラなどに精通。米国GALLUP社認定ストレングスコーチとしても活動。

illustration by 寺田マユミ text by 編集部

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