親子で向き合うホントの「ゲーム依存」のヘッダー

勉強もろくにせず、家族との会話もなく、家の中ではゲームざんまい……
そんな子どもの様子を見てふと頭をよぎるのが「ゲーム依存」という言葉。
そこで子どもを責めても、ゲームを一方的に悪者にしても
何の解決にもならない。

なぜなら、ゲーム依存は「病気」だから。
脳の発達過程や機能、精神疾患とも密接に関係しているし、
ゲームが、勉強ができない負い目やいじめなどの対人ストレス、
学校や家庭での居場所のなさからの避難先になっている可能性もある。

さまざまな要因が複雑に絡み合うゲーム依存は、
専門的な知識をもって挑まなければ到底勝つことができない相手である。
裏を返せば、正しい知識があれば治せる病気でもあるのだ。
さあ、必要以上に恐れずに親子で克服への第一歩を!


WHO も病気と認定した「ゲーム障害(ゲーム依存)
週日・休日のゲーム時間の分布のグラフ
過去12 カ月間のゲームによる問題
出典:厚生労働省「ネット・ゲーム使用と生活習慣に関する実態調査」 ※調査実施機関:独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター  (調査時期:2019年1~3月、調査対象:住民基本台帳から無作為抽出により選出された10歳~ 29歳の若者9000人)

ちょっとしたきっかけから依存へ。あなたのすぐそばにもいる⁉
ゲームやネットに依存してしまう人たち

誰もが陥る可能性のある「ゲーム依存」。まずは当事者の告白を通して、その実態を知ることから始めよう。

「学校から帰ると寝て、23時頃起きて朝までネットする生活に」

スマホが手放せなくなり昼夜逆転した10代女性

中学入学を機に親にスマホを買ってもらい、21時になったら親に預ける、食事中は使わない、などいくつか約束しましたが、数日後には破っていました。
そのうち、テスト前という理由で親にスマホを取り上げられると、ラインで一斉連絡がきているのではないか、取り上げられていることを知られると格好悪い……などいろんな思いが頭をめぐるようになり、勉強に集中できなくなりました。

高校生になると、友達を作るサイトやオンラインゲーム、SNSなどで人間関係を作るように。学校から帰るとすぐ寝て、23時頃に起きて朝までネットをする生活になり、家族との会話もなくなり、学校生活もつまらなくなりました。

そんな中、親に連れられて病院へ。自分でもおかしいと感じていたのか、ネット依存という診断を素直に受け入れることができました。その後もスマホは手放せませんが、ネット上の友達は断ち切ることができました。現在は月に1回、病院で診察を受け、先生に話を聞いてもらっています。

10代女性の依存から治療へのみちすじ

「部屋は荒れ、食事もろくにとらずやせ細り、収入の道が途絶えかけ…」

オンラインゲームにハマり仕事も健康も失いかけた30代男性

軽い気持ちで無料のオンラインゲームを始めたら、ゲーム内でのチャットがとても楽しく感じられました。
パソコンに向かう時間が増えるのに従い「彼女もできないし、大した会社にも行っていない」「お金もなければ、友人もほとんどいない」という卑屈な思いが強くなり、「せめて仮想空間では誰かとつながっていたい」「誰にも迷惑はかけていないから、文句を言われる筋合いはない」などと言い訳しながらゲームを続けていました。

会社の残業も遊びの誘いも極力断って、就寝と仕事以外はオンラインゲームに没頭し、アイテム購入のためどんどん課金するように。ゲームに飽きてきた頃に新しいアイテムの投入やイベントの更新があるので、やめる機会もつかめませんでした。

昼夜が逆転し、部屋は荒れ、食事もろくにとらずやせ細り、仕事は中途半端なままで収入の道が途絶えかけ……気付けば誰も周りにいない状態に。心配した母親の勧めで受診することになり、今は回復の道を医師と一緒に探しています。

30代男性の依存から治療へのみちすじ
出典:大石クリニック公式HP

あなたのお子さんは大丈夫⁉
ゲーム・ネット依存にはこんな症状が!

ゲームやネットへの依存が疑われたら、まずは慎重に観察を。主な症例とチェックリストを参考に、冷静に判断しよう!

ゲーム依存の主な症例
⚫︎勉強や部活動についていけなくなり、不登校になる
⚫︎ゲームやスマホを優先し、友達や家族との約束をすっぽかすようになる
⚫︎ゲームへの課金がやめられず、親のお金を盗むようになる
⚫︎学校の課題を後回しにして、結局やらないまま終わる
⚫︎ゲームやスマホを取り上げようとすると、暴力的に反抗する
⚫︎制限時間を過ぎても、ゲームや動画視聴をやめられなくなる
⚫︎昼夜逆転の生活になり、登校時間になっても起きられなくなる

出典:大石クリニック公式HP

病院に相談するべきかどうか、ゲーム依存の度合いを確認
ゲーム依存症チェックリスト

過去12カ月について、以下の質問のそれぞれに「はい」「いいえ」で答えてください。最後の質問については、もっとも当てはまる回答を1つ選んでください。

  1. ゲームをやめなければいけない時に、しばしばゲームをやめられませんでしたか。
  2. ゲームをする前に、意図していたよりしばしばゲーム時間が延びましたか。
  3. ゲームのために、スポーツ、趣味、友達や親戚と会うなどといった、大切な活動に対する興味が著しく下がったと思いますか。
  4. 日々の生活で一番大切なのはゲームですか。
  5. ゲームのために学業成績や仕事のパフォーマンスが低下しましたか。
  6. ゲームのために昼夜逆転、またはその傾向がありましたか(過去12カ月で30日以上)。
  7. ゲームのために、学業に悪影響が出たり、仕事を危うくしたり失ったりしても、ゲームを続けましたか。
  8. ゲームにより、睡眠障害(朝起きれない、眠れないなど)や、不安などといった心の問題が起きていても、ゲームを続けましたか。
  9. 平日、ゲームを1日にだいたい何時間していますか。2時間未満:2時間以上:6時間未満:6時間以上

※1~8の質問項目に対する回答「はい」の数字を1点、9の質問については左から0点、1点、2点で計算。合計5点以上の場合、WHOが認定する「ゲーム障害」が疑われる

出典:「 ICD-11ゲーム障害スクリーニング検査(GAMES検査)の開発と検証および一般若年層における有病率の推定」(翻訳:久里浜医療センター)

「心が弱い」「ゲームが楽しすぎる」なんて単純なものではない
ゲーム・ネット依存になる真の原因は?

ゲーム・ネット依存の原因は、「心が弱い」といった精神論にあらず!脳や発達障害などの精神疾患と、依存との関係を正しく知ろう。

脳の神経ネットワークの暴走と「ハマる」回路の形成

人間の脳には「報酬系」と呼ばれる神経ネットワークがあり、そこではゲームやSNS、動画などの刺激がきっかけで「ドーパミン」という神経伝達物質が分泌される。このドーパミンは快感ややる気をもたらすので、ストレスやいじめなどのつらい現実を忘れさせる効果があるが、脳がこのドーパミンを求めるあまり、ゲームやネットをやるよう何度も指令を出すようにもなってしまう。そうなると「ハマる」回路が形成されて簡単には抗えなくなり、依存行動を示すようになる。「やめたい、けどやめられない」といった特徴を示す依存症は、気持ちだけの問題ではなく、脳の病気でもあるのだ。

脳の神経ネットワークの暴走と 「ハマる」回路の形成

発達障害
ADHD(注意欠如・多動症)の人は衝動性をコントロールするのが苦手で、ゲームに夢中になると途中でやめることが難しいため、依存してしまう傾向が。一方、ASD(自閉スペクトラム症)の人は現実での対人コミュニケーションが苦手なため、ネット上にいる趣味やゲームで盛り上がれる仲間に居場所を求めることがあり、それが依存へとつながる傾向がある。

睡眠障害
睡眠リズムが乱れた人が「眠れるまでスマホでもやっていよう」とスマホをいじった場合、スマホの明かりやコンテンツでかえって脳が活性化され、さらに眠れない状態に陥ることが。この悪循環から抜け出せず、ゲームやネットに依存してしまうケースが多数見られる。

社交不安障害
社交不安障害を抱える人は、人前に出ることや集団の中にいることに対して極度の緊張や不安を抱きやすいため、学校や職場に行くことを回避するようになり、おのずと1人で家にこもる時間が多くなる。その結果、空いた時間をゲームやネットでつぶしたり、他人とのコミュニケーションをオンライン上で求めたりするようになり、どんどんのめり込んでいく傾向がある。

出典:大石クリニック公式HP
大人と子どものゲーム依存の違い
出典:友田明美「脳科学・神経科学と少年非行」/犯罪社会学研究  42巻(2017年) P.11-18

\ 教えて!ドクター /
現場最前線の医師に聞く ゲーム依存にまつわるQ&A

ゲーム依存治療に深く関わる大石泰史先生に、現場ならではのリアルな意見を聞く!

Q ゲーム依存になりやすいのはどのような人ですか?
A まじめで責任感の強い人は比較的なりやすいと思います。そういう人は周囲に相談したりSOSを出したりするのが苦手なため、つらい気持ちを解消できないまま抱え続け、そのつらさを緩和するためにゲームに没頭してしまう傾向があります。

Q ゲームを長時間やり続けるのはすべて依存行動ですか?
A ゲームによって社会的または家庭的な支障が起こっているにもかかわらず、その問題行動をやめることができない場合に依存行動になっていると考えます。ですから、お子さんが長時間ゲームをしていたとしても、学校に行くことができて成績も落ちたりせず、ご家族との関係も悪化していないというのであれば、依存行動とは見なされないでしょう。

Q ゲーム依存にならない予防法はありますか?
A ゲーム依存になる原因はいろいろで、残念ながら「これをやっておけば大丈夫」といった決定的な予防法はありません。もしゲーム依存だけを予防するのであればゲーム機やスマホを持たなければいいのですが、現代の生活ではほぼ不可能です。また、ゲームには現実世界でのストレスやつらさを緩和するポジティブな効能もありますので、完全に遮断するのは得策ではないと思います。

Q 治療専門機関に頼らず、本人や家族だけでゲーム依存を治すことはできますか?
A 正直、かなり難しいと思います。ご本人やご家族だけで対処しようとすると、お互いにどうしていいか分からず、衝突を繰り返しては疲弊してしまうケースをよく見受けます。また、「家族が本人のために取った行動」が本人の治療や回復を妨げてしまうこともあります。そうならないためにも、依存が疑われたら早めに専門機関に相談することをお勧めします。

ひと昔前は少なかった!/
ゲーム依存に陥りがちな現代のゲーム事情

ひと昔前のゲームは家庭のリビングなどにあるテレビに接続してプレイするものが多く、プレイ環境や時間、家族の妨害などの制限から、ゲーム依存に陥る人は少なかった。しかし、現在はスマートフォンやオンラインゲームが普及。場所や時間を問わずゲームを遊べるように。
結果、ゲームそのものも課金によるガチャでの運試しや、継続してプレイするともらえるログインボーナスなどギャンブル性、中毒性の高いものが人気を得るようになった。加えて、ゲーム内コミュニティでの仲間意識や承認欲求が現実世界の人間関係より重要視されるようになったことで、誰しもがゲーム依存に陥る可能性が高くなったと言えるだろう。 

ゲームは悪いことばかりじゃない!/
科学的根拠から示されたメリット

中毒性の高さから、ゲーム=悪のように言われがちだが、近年の研究によるとゲームを通して注意力、空間認識力、問題解決能力など認知機能が向上することが示されている。特にアクションゲームやシミュレーションゲームは脳の活性化を促すことでも知られ、子どもの知能にプラスに働くほか、中高年の認知症予防にも有効な手段として注目される。
また、ストレス軽減やリラックス効果をもたらすなどメンタルヘルス改善効果や、人とコミュニケーションを取ることで孤独感を解消する効果も。さらに学習意欲を高める効果があることから、教育ツールなども開発されている。そのほか、外で遊ばなくなり体力がなくなると思いきや、体力アップを目的とした身体活動量を増やすゲームもそろう。ゲームも使い方次第!?

Q 病院ではどのような治療が受けられますか?また、治療にどれくらい時間がかかりますか?
A 当院で主に行っているのが「集団精神療法」です。患者さま同士で話し合うことで、自分の居場所を感じ、ゲーム以外の活動にも目を向けられるようになってもらいます。また、つらい気持ちを吐露(とろ)する練習にもなりますので、依存に陥りにくいメンタルを作ることもできます。もし、患者さまが発達障害など他の精神疾患を併発している場合は、その精神疾患に対して「投薬治療」を行うこともあります。治療期間については数カ月で終わるというものではなく、年単位で治療されることがほとんどです。

Q 自宅から通いながら治療することは可能ですか?
A はい、当院では外来通院での治療となっておりますので、学校や職場に通いながら受診することが可能です。また、治療環境が整ったグループホーム(回復施設)もありますので、そちらに入居して通院することも可能です。

Q ゲーム依存がいったん治っても、再発することはありますか?
A 苦しい状況に陥ったときに再び依存行動を起こす可能性があります。再発した際に大事なのは、まず医師や周囲の人へ正直に病状の再発を伝え、助けを求めて悪循環を止めることです。依存症は慢性的な病気で、時間がたったり状況が変わったりするとご本人の問題行動への認知も変わってしまうため、病状が落ち着いた後も定期的な通院や振り返りを通して現状を確認することが必要となります。

Q ゲーム依存の治療に健康保険は使えますか?
A はい、お使いいただけます。当院では保険診療の範囲内で治療を行っていますので、費用面でのご心配をおかけすることはほぼないと思います。

Q 子どもを病院に連れて行きたいとき、親はどのように声がけすればいいですか?
A まずは「私はあなたの〇〇〇なところを心配している」といったように、「私」を主語にしたアイメッセージで声がけするといいでしょう。そして、ご本人が困っていることを自分から相談してくれたときに「こういった相談するところがあるみたいだよ」と、ご本人が主体となるように受診や相談を促していくことをお勧めします。子どもを心配する親の気持ちは百も承知ではありますが、ご本人の気持ちを確認しないまま前のめりに病院での受診を希望するなど、ご家族がご本人の問題を肩代わりすることだけは避けましょう。

Q ゲーム依存の子どもに対し、親がやってはいけないことはありますか?
A ゲーム機やスマホを無理やり没収する、お子さんを責めるといった行為は状況を悪化させてしまう可能性があるためお勧めできません。まずはご家族の方が自分自身を守るためにも、ご家族向けの勉強会などに参加し、依存症の知識を得たり、お子さんへの対応の仕方を学んだりしていただくといいでしょう。結局は「本人と家族」と「支援者」という構図を作ることが、ご本人とご家族の負担を減らすポイントとなります。そのためにもご家族だけで抱え込むのは避け、治療専門機関にご相談されることをお勧めします。

ゲーム依存を相談できる機関

専門医療機関
精神科医や臨床心理士に相談しながら、精神治療や心理療法、薬物療法などを受けられる。

精神保健福祉センター
都道府県および政令指定都市に設置されている公的機関で、依存症に関して無料で相談できる窓口がある。

児童相談所・子ども家庭支援センター
ゲーム依存に専門的に対応できない場合もあるが、子どもの生活や心理について無料で相談することが可能。

民間のカウンセリング機関
臨床心理士や公認心理士のカウンセリングを受けることが可能。ただし、費用は保険適用外となる。

自助グループ・家族会
ゲーム依存の当事者や家族と悩みを分かち合えるほか、場合によってはアドバイスを受けることもできる。

このほか、子どもの学校での様子を含めて相談したい場合はスクールカウンセラー養護教諭、課金の問題を相談する場合は独立行政法人国民生活センター法テラス(日本司法支援センター)を利用することが可能。

大石 泰史先生

大石 泰史先生

おおいし・やすふみ 精神科医。日本精神神経学会所属。神奈川県横浜市にある「大石クリニック」にてさまざまな依存症の相談・治療に従事。ゲーム依存の治療にも深く関わっており、患者本人のみならずその家族の悩みや困りごとにも向き合い、一緒に解決の糸口を探っている。

大石クリニック

<取材協力>医療法人社団 祐和会

大石クリニック

30年間、精神科クリニックとして依存症を専門的に治療。ゲーム依存をはじめ、アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存などさまざまな依存症の相談・診察に通院で対応している。

〒231-0058 神奈川県横浜市中区弥生町4-41
TEL:045-262-0014(代表)
URL:https://www.ohishi-clinic.or.jp/

photograph by イメージマート illustration by ilaught text by 編集部

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